ちろる

銀座化粧のちろるのレビュー・感想・評価

銀座化粧(1951年製作の映画)
3.7
女手ひとつで息子を育てる雪子は銀座のキャバレーを任されている。

1950年代に生きる【女】の形を成瀬ならではの視点で見せつける。
雪子のように夫を戦争で奪われた戦争未亡人は巷にたくさん溢れていたこの時代、雪子のような女も特別な存在ではなかった。

歌う少女や、花売り娘、おせんべい売りの少年まで。
子供たちが労働を強いられる時代背景も当たり前の風景なのだ。
この時代の銀座には驚くほどに子供たちが溢れている。働く子供の隣で無邪気にめんこで遊ぶ子供もいる。

雪子という1人の女を軸にしながらも、彼女を取り巻く人間模様と、彼らのエピソードが入り混じり、ほのぼのとした印象すらある。

それにしても成瀬の描く作品は圧倒的に女性が多い。
他の成瀬作品のレビューでも書いたかもしれないが、ヒロインが壮絶な人生であったとしても、決して哀れに見せずに、それどころか逞しさと女の強かさの描き方が非常に上手くて、何より【女】をとても良く知っている。

だから、観ていると女である内面を深く揺さぶられる時がある。

私には雪子のような包容力や、健気さは無いけれど、こうありたいと思うヒロインの優美さが心に触れるのだ。

ラスト、雪子が橋を渡る姿には、新たな日々を期待して、前向きに歩き出そうとする彼女の決意が清々しく見える。
やがて雪子の息子も大きくなり、1人になり今とは違う独りぼっちの人生もやがて始まるのだろう。
そんな哀愁も後ろ姿にしっかりと背負い込んで、銀座の町と共に生きる女の半生。
あっぱれです。
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