このレビューはネタバレを含みます
ミステリーものを観るといつも、周囲が計画通りに動かなかった場合どうしたんだろう?と、そのことばかりが気になる。何故なら、犯罪者の計画には、アリバイを立証してくれたり、罠に引っかかってくれたりする周囲の人間が重要な鍵となるからだ。
この作品はその疑問から始まったかのごとく、周囲の人間が計画外の行動ばかり起こす。妻は殺害予定時刻に映画へ行こうとするし、それが解決したかと思いきや、殺しを頼んだ男が逆に殺されてしまい、妻は生きている。さて、どうするか?夫は頭をフル回転させ、こちらの予想を裏切り、何度も危機をすり抜ける。もう駄目だろうとこちらがしたり顔を見せているところに、彼は余裕の笑みを浮かべる。しかし、結局は真実が明るみに出て、ハッピーエンドに。
ヒッチコックの作品はきちんと物語を着地させてハッピーエンドとなることが多いが、この作品については事件が解決した割には何だかいまいちなハッピーエンドだった。
夫は冷静に犯罪計画を進め、最後まで心情を語らなかったが、途中死んだ男に語っていた話が頭に残る。彼女のためを思って一人でテニスの大会をまわった。ところが、帰ってきた時、彼女の心は別のところへいってしまっていた。
妻は不倫相手に、貴方の部屋を出て帰った日から夫が昔より優しくなったといった。それはきっと、彼女の愛を取り戻したかったからだろう。
夫は男に、妻を脅せば自分を頼るだろうと思った、といった。それはきっと、最後の希望だったのだろう。
もちろん、殺害計画なぞ愚かで恐ろしいものだ。だからこそ、私は彼に人間的な、あまりに人間的なものを見ないわけにいかない。