青山

カジノの青山のレビュー・感想・評価

カジノ(1995年製作の映画)
3.9

天才的なギャンブラーのエースはベガスのカジノ「タンジール」の実質的なボスに抜擢されるが、金の亡者の妻ジンジャーや気性の荒い親友のニッキーが彼の人生を狂わせていき......。


スコセッシ監督がデニーロ、ジョー・ペシら出演で送る、70〜80年代ごろのマフィアと密接な関係にあったダーティーなカジノを舞台とした叙事詩。本作も『グッドフェローズ』同様実話が基となっています。
マフィアが出てくるところや、栄枯盛衰のストーリー、ジョー・ペシの役柄なんかはまんま『グッフェロ』なんですが、カジノという舞台がやっぱ良くてそれだけで単なる焼き直しではない別物として楽しめちゃいます。

夜には灯ひとつなく真っ暗で広大な砂漠。その中にクソコラみたいに不自然に煌々と灯るベガスの光。このロケーションを観るだけで、主人公の栄光の儚さが感じられます。
主にモノローグのナレーションによって話が進んでいくんですが、冒頭でなんと主人公エースの乗った車が爆破するシーンから始まるド派手さで、そこから過去に戻ってしれっとエースのモノローグのまま話が進んでいくところは『サンセット大通り』を連想しました。
加えて、ジョー・ペシ演じるニッキーのモノローグも、エースのものと交互に入ってきて、2人が競い合うように語るせかせかしたところがカジノという世界のスピード感にマッチしているのも面白かったです。

序盤はマツコの知らないカジノの世界の表側から裏側までをチャキチャキ解説していくような流れで、そのハチャメチさに驚かされつつめっちゃおもろいです。カジノのザクザクした金の流れが凄すぎて今月のカード引き落としすら払えない私からしたら異次元である。

そして中盤あたりからはもうシャロン・ストーン演じるエースの妻ジンジャーが大暴れ。
金の亡者でくだらなすぎる元カレといつまでも縁を切らないクズすぎる彼女なんですが、もうあまりにもクズすぎてだんだん哀れになってくるしどんな酷い育ち方をすればこうなっちゃうのかと勝手に悲しい過去を想像してつらくなってさえしまう、そんくらいクソ。
そんな彼女に対して一貫して暴力を振るわずに優しく接するエースが(レイジングブルのクズ主人公と比べたら)聖人にさえ見えてきます。
そしてジョー・ペシのニッキーも例の如く大暴れ。ニッキーが色んなやつを消しまくって行くけど証拠がなくて捕まらないみたいなのがポンポンと流される中盤のあの演出が最高にカッコよかったね。
後半はこのヤバい2人にぶんぶん振り回されるエース......というもうほぼドタバタコメディみたいでなんか笑っちゃいました。しかしジンジャーがやばすぎてついにニッキーもお手上げみたいになるのは笑う......。

金と暴力とセックスに塗れた狂騒劇なんですが、カジノがクリーンで家族でも来られる場所になった現在が少しだけ語られることでその狂騒が懐かしい煌めきに感じられてあの頃は良かったなぁとすら思わされるのがずるいよね。
そんな終わってみればどこか儚さも感じさせられる大作で、3時間かけてほぼ3人の愛憎劇みたいな話だったけど全然弛まずにハイテンションで観続けられたのがさすがです。
青山

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