SANKOU

JSAのSANKOUのレビュー・感想・評価

JSA(2000年製作の映画)
4.3
板門店の軍事境界線で起こった殺人事件。生き残った北側の兵士と南側の兵士の証言に食い違いがあり、中立国監視委員会から派遣されたソフィー少佐が事件の真相を解明しようとするが、尋問中に南側の兵士が自殺を図ってしまい、解明は困難になってしまう。
時間は事件前に遡り、そこから徐々に真実が明らかになっていくが、話が進むにつれてとても悲しい物語であることが分かってくる。
今も軍事境界線が敷かれているが、元はひとつであった同じ言葉を喋る同じ民族であるはずの北朝鮮と韓国の人達。国同士は敵対しているが、そこで暮らす人達は同じ民族として全く理解し合えない存在ではないはずだ。
北側のギョンビルとウジンは、地雷を踏んでしまった南側の兵士スヒョクを助けただけ。スヒョクは助けてもらったお礼をしたかっただけ。
お互いに悪意のない、純粋な友情から始まってしまった許されない交流。スヒョクは同僚のソンシクも仲間に引き入れ、北側の共同警備の詰所に夜な夜な通い、彼らと親睦を深めていく。
それぞれに国家に対する考え方の違いはあれど、綺麗な女性の写真を見て盛り上がり、チョコパイの味に感動する。ここが軍事境界線でさえなければ、普通に友情を育むことができたはずの四人。
しかし少しずつ物語は悲劇的な結末へと向かっていく。
実際には南北の兵士が仲良く交流するなどありえないとか、必要以上に南北統一に対する憧憬を煽ってしまった作品だとか、色々と批判のある作品ではあるが、あくまで一つのフィクションの作品として観た場合、とても心に突き刺さる根本的な人間のあり方を描いた映画だと思った。
ソフィー少佐の出生の秘密が明かされる、朝鮮戦争後の捕虜のエピソードなども色々と心に残った。そしてスヒョクが選んでしまった衝撃的な結末。
ひとつの国が分断されてしまったことで、本来なら起こるはずのない悲劇が生まれてしまった。それは今も続いている。
ラストの一枚の写真に写されたモノクロの光景が目に焼き付いた。
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