ブタブタ

アナザヘヴンのブタブタのレビュー・感想・評価

アナザヘヴン(2000年製作の映画)
3.2
Netflixにて再見。

もう15年以上前の作品なのでネタバレ全開であしからず。

90年代末から2000年代初頭に起こった「Jホラー」ブームとその後の日本ホラー映画の系譜。
『リング』がその決定的な作品だったわけですが同時上映の『らせん』の脚本・監督でもある飯田譲治氏は超能力モノの『nighthead』等のTVシリーズや原作に忠実なTVスペシャル版『リング』の脚本も手掛けていてJホラーとも深く関わっている方です。
が正直『らせん』はダメダメで飯田譲治氏のホームグラウンドはホラーよりSFやサスペンス・スリラーにあると思います。

『セブン』×『遊星からの物体X』ですね。
凄く好きな作品何ですけど、色んな所が今ひとつ物足りない、もう少しな感じがします。

一番好きなシーンは「何か」に身体を乗っ取られた敦(柏原崇)がサイコキラー化しマナブ(江口洋介)と対決する一連のアクション。
この頃の柏原崇さんは本当にカッコよくて美しくて、江口洋介さんとキスしたり行動原理も意味不明で残忍で煽情的な殺人鬼を演じてます。
撃たれようがビルから落ちようが死なない不死身の敵のこのシークエンスがこの映画の山場でしたね。
この作品もまた「マトリックス以後」で影響はモロでビルをジャンプするところとか。

因みにうちの奥さんは子供の頃『白線流し』をみて柏原崇さんの大ファンだったそうです。
最近姿を見ないのは中国に活動の場を移してるからだそうで、こういう才能のある方は詰まんない日本の芸能界何かに縛られず世界にどんどん出て欲しいですね。

フォロー先様のレビューに「不作時代のシャマラン映画のよう」と書かれていたのですが、正にそんな感じも受けます。

液状で人間の脳から脳に乗り移って身体を乗っ取る「何か」の正体は肉体を持たない未来人との事ですが、ちょうどこの頃一応の完結を見せた『エヴァンゲリオン』で人類補完計画が発動し全人類の肉体が消滅し一つの海に同化して精神だけの存在になったあのラストシーン。
コレが元ネタで「何か」はあの未来世界から来た人間なのかとも思いました。

でもハッキリ言ってはこの敵の正体は余りにも肩透かしでガッカリでした。

洒落怖の名作に『巣食うもの』と言うお話しがあって人間を「扉」として異次元(又は宇宙)からやって来る目的も正体も一切不明の怪物を巡るストーリーで単なる「怖い話」からクトゥルー的な世界観の広がりを見せる、こんな感じで「何か」をもっと恐怖に満ちた謎の存在として設定を突き詰めていれば面白くなっていたと思うのです。

こういった作品、SFでスリラーでサスペンス物が成功していれば後続作品も作られたでしょうしJホラーとは別の、もう一つのJスリラー?とも言うべき映画の系譜がもしかしたら出来ていたかもと思うと残念です。
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