りっく

MOOSIC PRODUCTS!/nicoのりっくのレビュー・感想・評価

MOOSIC PRODUCTS!/nico(2012年製作の映画)
3.4
自身を多少なりともモデルにしているだろう映画監督を主人公に、劇中で製作している映画の中と、映画を製作している過程を行き来する入れ子構造のようになっている本作は、そのような語り口がうまく機能しているか微妙なところもあり、ストーリーテラーとしても超一流になった今泉監督の成熟っぷりが逆に確認できる。

一方で、例えば本読みをしている際に台詞がないから帰ろうとする外国人や、関係ないのにロケハンに同行しようとする役者など、シチュエーションという単位で切り取ると魅力たっぷり。冒頭の自転車のかごに置き去りにされる赤ん坊の表情と仕草なんて、到底演出できない。

主人公からすると映画という崇高なものを汚そうとする、相手からするとそのこだわりようが理解できない、その齟齬や温度差によって生じる気まずい空気と、そこから逃れようとする映画監督という生き物=自分を見つめ直す、パーソナルな一作だろう。
りっく

りっく