このレビューはネタバレを含みます
少年少女の躍進がいつだって僕の心をつかまえようとする。助走した分だけ、踏み込んだ分だけ、
それでも彼らは飛ぼうとしない。
9.11(アメリカ同時多発テロ)によって父親を失ったオスカー(トーマス・ホーン)
オスカー「太陽が爆発しても、僕たちは8分間気づかない。」
オスカーは父親が残した鍵にはまる鍵穴を探すことでその8分を伸ばそうとする。
心の痛みは姿を現さない。
自傷行為の多くは生きている実感のために行うそうだ。痛みは生の実感をくれる。オスカーの場合はきっと違う。
どれだけ泣いても苦しんでも、窒息しそうなほど息が詰まるのに死ぬことはできないどころか、体には痕跡すら残さない。そして、体に症状が出始めたらもう手遅れだ。
痛みだけがある、体には傷一つない。とっくに8分は過ぎてる。それでもそれを信じようとせず、ただただ頭がおかしくなりそうになる。
君の苛立ちも僕にはすごくわかる。何に苛立っているのかとか、焦りとか。ただね、君のその悩みとか痛みだけは、誰にも理解されない。それだけは君だけのものなんだ。
オスカー「僕はすぐに良くなるよ、普通になる」
リンダ(母)「そんな必要ないわ、今のままで完璧よ」
オスカー「僕頑張ったんだよ、これ以上無理っていうくらい」
リンダ「わかっているわ、わかってる、ちゃんとわかってる」
オスカー「そんなの嘘だ」
リンダ「ほんとよ」
オスカー「ママはなんにも知らない」
君の母親でさえ君の苦しさの全貌は見えていない。君が母親の苦しみを全てを理解できないのと同様に、
周りの人々は君が苦しんでいることしか分かっていない。
普通になろうとしなくていい、忘れようとしなくていい。その痛みは本当に、君だけのものなんだ。
きっとこの先、「あの時感じた痛みはどんなだっただろう」と考える。でも、そこまで潜る前に涙で前が見えなくなる。それでも、その痛みに触れようとするなら、
その痛みはものすごく静かで、ありえないほど愛おしい