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この空の花 長岡花火物語のRenkonのレビュー・感想・評価

この空の花 長岡花火物語(2012年製作の映画)
4.5
「みんなが爆弾なんかつくらないできれいな花火ばかりを つくっていたら きっと戦争なんか起きなかったんだな」  -  山下清

大林監督が、新潟県長岡市で体験した出来事を基に作られたワンダーランド•ストーリー。
「米百俵の精神」から始まり、戦争、そして中越地震を乗り越えた長岡の民による、連鎖の歴史を紐解いていく。
分厚い教科書のページを一気に読み上げられた様な、もの凄い情報量だった。
それでも出演者の語りと、文字の羅列により、長岡の歴史がスポンジの様にどんどん頭に吸収されていった。
新潟にファットマンと同じ型の模擬原子爆弾が落とされたという事実、
初めて知った。
長岡に取材に訪れた玲子も、自らが長崎出身の被爆二世であることから、ここで奇妙な縁を感じる。
取材を進めるにつれ結ばれていく点と線。
「旅立ちなのにどこか遠いところへ帰っていく」というセリフは、正に広島出身である大林監督自信が取材の中で思ったことなのだろう。

この映画の主役は松岡泰子や高嶋政宏では無く、後世に語り継がれる長岡の花火であり、それを義務とする市民の方々だったと思う。
山下清の絵にも登場する、長岡の花火。
この地での花火は、戦時中には出征の際に打ち上げられたというエピソードもあったが、今では「追悼、復興、祈り」の想いが込められ、白菊のような、余韻の残る花火となっている。(イベント花火では無いので、天候関係無く、毎年長岡が空襲を受けたのと同じ日に合わせて打ち上げられるというエピソードも素敵)
戦争経験者の方の中には、花火は戦時中の爆弾を思い出すから嫌いだという人もいるのだという。
それでも彼らは、戦争がどんなに惨くて、不条理なものかということを、後世に語り継いでいく。
「戦争にはまだ間に合う」
戦争が終わった。と、我々が平和ボケしているからこそ、この言葉の意義はとても大きい。
そもそも、戦争はまだ終わっていないのかもしれない。
未だに隣国と、慰安婦や島の問題で揉めている。
それこそ次の戦争が起こる可能性も、十分にあるかもしれないのだ。
果たしてそれでいいのだろうか?
長岡の花火は我々にそう問いかける。
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