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永遠の人のmasahitotenmaのレビュー・感想・評価

永遠の人(1961年製作の映画)
3.9
木下恵介監督が高峰秀子のために脚本を書き映画化。
30年にわたる憎悪の半生を描いたホーム・ドラマ。
撮影は楠田浩之。
音楽は木下忠司。
(1961)

物語はフラメンコのリズムに乗って、五章に分かれ展開される。

第一章 昭和7年の九州、阿蘇。
阿蘇谷の大地主・小清水(永田靖)の小作人(加藤嘉)の娘・さだ子(高峰秀子)には隆(佐田啓二)という恋人がいたが、片足を負傷して戦地から復員した地主の息子・平兵衛(仲代達矢)に体を奪われ、入水自殺をはかるが助けられる。
やがて戦地から戻った隆は事実を知り駆け落ちを約束するが、約束の場に現れず、さだ子の幸せを願って去っていく…。

第二章 昭和19年。
平兵衛と愛のない結婚をしたさだ子には、三人の子がいたが、12年前に無理矢理体を奪われた時の子ども(長男)をさだ子は愛することができなかった…。

第三章 昭和24年
第四章 昭和35年
第五章 昭和36年

~他の登場人物①:隆の家族等~
・隆の妻、友子(乙羽信子)
・隆と友子の子(石濱朗)
・隆の兄(野々村潔)

~他の登場人物②:さだ子と平兵衛の子ども~
・長男、栄一(田村正和)
・次男、守人(戸塚雅哉)
・娘、直子(藤由紀子)

~他の登場人物③~
・駐在のお巡り(東野英治郎)

「人間には忘れることができることとでけんこととがあります」

「お母さんがお父さんを許さない限り、僕もお母さんを許しませんからね」

自分を愛してくれない人と一緒になっても、2人とも幸せにはなれない。
生まれた子どもに罪はないが、愛されない子どももまた不幸である。
しかし、憎しみはどうしても消えない。
憎しみから生じる苦しみの呪縛から逃れるには、忘れたい過去と向き合い相手を許すことが必要だが、仮に許すことができたとしても長い年月がかかり、その時人生は残されていないかも知れない…。

木下恵介(及び成瀬巳喜男)監督のミューズで日本映画界を代表する女優、高峰秀子が熱演。
フラメンコ音楽にのせた口上を(特にテレビだと)古めかしく感じる人がいるかもしれない。
なお、30代頃まで洋画ばかり見ていて邦画をバカ(?)にしていた私が日本の映画も積極的に見るようになったのは、かつてNHKで放映された小津安次郎監督特集や木下恵介監督特集のおかげです(NHKはサイレント期を含め貴重な名画をたくさん放映していたのに…特許権の関係でしょうか?)
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