公開当時はとても評判が高く、本作で竹中直人のことを僕は知った。
ただ、恐らく13歳ぐらいの頃にレンタルビデオで借りて観た記憶があり、当然と言えば当然だが全く理解ができなかったし、内容も覚えていなかった。
しかし、この時につげ義春の名前も知り、後年に「サブカル」にハマっていく時期と、割と社会から脱落しがちだった20代の半ばにジワジワとその威力が効いてきた、という経緯がある。
基本的には「映画」に対して原作を掘るということを行わないタイプなのだが、原作の世界観にかつてはどハマりし、擬似的に「世捨て人」あるいは「隠者」としての体験をするという時期を過ごした自分には、その「再現度」に圧倒された。
特に、1980年代後半から90年代初頭の風景をそのまま使いながら「つげ義春」の世界観を再現したのは凄みを感じる。
また、本作が初監督である竹中直人も、後年とは違って、自身の演技も含めて、個性的な俳優陣のせり立つ「個性」の暴走をせずどちらかと言えば抑制された演技が全体的に統一されてストレスがない。
画面づくりによる世界観の構築と、大仰でない演技の説得力、本作では明る過ぎず暗過ぎずの独特のニュアンスを持ったGONTITIの音楽によって、三位一体の「良い映画」として仕上がっていると思う。
「世界観」の勝利で終始ずっと楽しかった。