Kirisshy88

無能の人のKirisshy88のレビュー・感想・評価

無能の人(1991年製作の映画)
3.7
【内容一部】
かつて少し売れた漫画家(竹中)は、今は絶筆中である。理由は自分の望む漫画を出版社が受け入れない、という芸術家にありがちな潔癖的な理想論によるもので、出版からの商業的依頼を拒否し続けている。
もちろん食べられるはずもなく、中古カメラや水石販売など、漫画以外の様々な副業にトライするが、本気になれずにことごとく失敗し、働く妻のヒモとして貧困生活を送っている。そこに鳥捕獲の名人や石売りの夫妻などが現れ、男女の話を絡めて物語は進行していく・・・

【感想】
理想の漫画かビジネスか、妻と離婚すべきか家庭の維持か、生きるべきか死ぬべきか、といった1か0の選択が漫画家に迫る。
物語は、ありがちな夫婦喧嘩や屁理屈、愚痴など竹中監督らしいユーモアを交えた会話型で進むが、この「人生1か0かの選択」と「自由とはどういうことか」という問いは鑑賞者にも鋭くつきつけられ、ゆったりしたぺースや全体に漂う緩慢さとは裏腹に観る者に緊張感や苛立ちを与え続ける。よってこの漫画家夫婦が選択した結末も鑑賞者それぞれの人生観で評価がかなり異なるのではないだろうか。

時折、挿入されるシュールなカットと家具が何気に良い。
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