Kirisshy88

この世界の片隅にのKirisshy88のレビュー・感想・評価

この世界の片隅に(2016年製作の映画)
4.1
広島でのんびり素朴に、周りの流れに身を任せて育ってきた画描き好きの牧歌的少女「すず」。思春期を過ぎてお見合いで呉の北条家に嫁ぐが、大人の新婚生活に慣れゆくうちに戦争が激化し、すずも周りも生活も次第に変わってゆく。激戦で兄を失い、姪も失い、自身の手を失い、実家の両親を失う。のんびり・おっとり型の「すず」でさえも、この世界から消えてしまいたい心境にかられるが、その時の支えたなったのが夫の深い愛であり、嫁ぎ先の家族愛であった。 

戦時のヒューマニズム映画としては、ひたすらに悲惨さを描いた作品と一線を画している。家族の死別のような悲劇的場面が多々あるもののの、おっとり粗忽者の「すず」のボケを中心に、家族のユーモアと笑いが随所に散りばめられている。しかし、その笑いは嫌味にはなっていない。「人間は笑いの入れ物」というセリフ通り、非常時において失われてはらない人間らしさ、夫婦愛と家族愛、集団で生きる意味を強く伝える秀作である。
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