YukiSano

マトリックスのYukiSanoのレビュー・感想・評価

マトリックス(1999年製作の映画)
4.2
最後の映像革命作品。
1999年世紀末に現れた映画界の救世主。

この作品以降ハリウッドは単にCG開発が発展しただけで映像の創意工夫は萎んでいった。バレットタイムというMVなどで使われていた既存の技術を映画に導入し、物語を付けたら革命が起きたという作品の内外でレボリューションを起こした作品。

この年はファイトクラブやシックスセンスなど革命的な映画が沢山公開され、映画界が新世紀に向けて奇妙なシンクロ二シティを起こしたのも記憶している。これらの作品は全て同じようなテーマで、自分の見てる世界、自分自身の存在を疑え、というものだった。

あれから20年以上経て新章レザレクションに向けて再見すると、未だに色褪せないテーマであると同時に外連味溢れる映像はスタイリッシュさが衰えていないことに驚いた。

公開当時はSF的な哲学よりもドラゴンボールもびっくりするような中2病に説得力を与えたような設定にしびれ、受け身も取らずにバレットタイムごっこをしたものだ。

続編はSFとしては面白いが中2病映画としては弱い。この第1作目は少年漫画の夢を大真面目にSFとして昇華してくれていた。キューブリックにもアベンジャーズにも出来なかったバランス感覚がある。

バカ映画スレスレの演出とスカスカの人間ドラマなのに、胸を打つ深遠そうなセリフと、恥ずかしいくらいに格好良い決めポーズ。錆び始めた男の子の夢に血が通う瞬間、私はまだマトリックスの中に居たのだと確信した。目覚めても夢の中かもしれないという疑いが喜ばしく、今も青臭い万能感に酔いしれる。

心がレザレクションした今、新たな中2病伝説の幕が明けることを歓喜を持って受け入れたい。
YukiSano

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