YukiSano

ザ・ホエールのYukiSanoのレビュー・感想・評価

ザ・ホエール(2022年製作の映画)
4.1
魂の救済にまで辿り着いたダーレン・アロノフスキー監督作。

太りすぎて歩けない男が最期に罪を贖う物語。モビーディックと化した主人公が、自分のせいでエイハブ船長になりそうな娘を救おうとする。

アロノフスキーの前作「ザ・マザー」と同じように家の中だけで話が進み、キリストの救済を信じる者と否定する人間が入れ替わり立ち替わり現れるという構成がそっくりな展開が続く。

「ザ・レスラー」の続きに見えるほどに娘への贖いを命がけで行う主人公は「ノア」のように頑なに娘の善性を信じ続ける。

強迫性障害に侵されながらも狂気のように信念に殉ずる所が「π」と同じだが、今回は愛を信じるという展開。というか宇宙の真理を追い求めていた作品から始まり、今作で魂の救済まで辿り着いたアロノフスキーの作家性の変遷に感無量。

レイチェル・ワイズと長年結婚してから離婚し、若いジェニファー・ローレンスと付き合ってたアロノフスキーの家族への贖罪にも見える。

とりあえずブレンダン・フレイザーの魂心の演技が凄まじい。どうしても舞台原作なこともあり、わざとらしい説明ゼリフや人物の動きが演劇的過ぎるきらいはあるのだが、ブレンダンの凄まじい演技のお陰で圧倒的な印象しか残らない。

落ち目のミッキーロークやウィノナ・ライダーを復活させてきたアロノフスキーだが、今回が1番凄い演技を引き出せていた。

ついに追い求めてきた救済を体現したアロノフスキー。次回に何処に向かうのか超楽しみ。
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