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隠し砦の三悪人のmatchypotterのレビュー・感想・評価

隠し砦の三悪人(1958年製作の映画)
4.0
《侍の映画》、Vol.7。『隠し砦の三悪人』。

以前に阿部寛、松本潤、宮川大輔でリメイクされた方を先に観ていたので、本家のこっちがいかにスゴいかがわかる。面食らう。

1958年の黒澤映画。
あたり一面の野原、霧がかかる丘陵、急勾配の岩場、城のお堀、湧き出る水場。
エキストラの数、火祭り、村の往来、馬で駆ける砂利道。

いったいどこでどうやって何人で撮影してるんだ、これは。
こんな風景、雰囲気、迫力、疾走感、豪快なスケール。
桁違いにも程がある。
こんなロケーション、今の日本ではもはや撮れないだろ。ここ、本当に日本か。

重厚さと、壮大さと、手軽な笑いを併せ持つ奇作。

太平と又七の2人のコンビ。
しょーもないせこい2人。しかしながら、金を目の前にして分け前に預かろうとするあくなき執念。

この2人のしょーもなさと執念だけを買って付き従わせて、断絶寸前の秋月家の姫と1人の家臣がお家再興のために金を隠し持って国越えをする話。

『七人の侍』にしろ、本作にしろ、『用心棒』にしろ、そもそものベースにある話と流れが面白い。普通に面白い。ズルズル引き込まれる。

それに加えて魅力的なキャラクター。
ビビりで、すぐにピーピー喚いて裏切ろうとするけど、自分の命と金のためにすぐに戻ってくるどこか憎めないこの2人。

それと、大それた使命を帯びた姫と家臣、三船敏郎と上原美佐。

この4人と途中で加わる1人の計5人の質素で、危険で、満身創痍の旅路。ある意味、ロードムービー。

関所、火祭り、追手から逃れるために、咄嗟に起点を効かせたアイデア勝負や、運に身を任せた出たとこ勝負。

女性の扱いや貧富や身分の差、時代劇を背景にした社会的な問題をチラつかせつつ、笑いありのワクワクが止まらない痛快なエンターテインメント。

もちろん、CG技術なんかないわけだから、とにかく生の自然や、生の人で全てを賄ってこのスケールを築いて貫いたわけだから、その豪快さたるや恐れ入る。

マジであの石段で起きる暴動とかどうやって撮ってんだろう、死人が出てるんじゃないか、という勢い、見た目通り圧巻。

数日前に『用心棒』観たし、『七人の侍』も観てたし、この黒澤映画の常連の出演者にいよいよ愛着が湧いてきたが、この三船敏郎の豪快なカリスマ性はいつどこで観ても圧倒される。

黒澤映画が殿堂入りしている意味が今更ながら段々とわかってきた今日この頃。

自分の理解が追いついたとか解釈してわかってきたというより、この映像から伝わってくるものにとにかく持っていかれてる感じ。

いやはや、面白い。
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