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隠し砦の三悪人のtakのネタバレレビュー・内容・結末

隠し砦の三悪人(1958年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

 うう、今まで映画ファンを公言しておきながら、まったく不勉強だった。お恥ずかしい。黒澤明監督の主要作はほぼ観ていたつもりだったのだが、ずっと観る機会に恵まれていなかったのが本作。こんなに面白い映画だとは思わなかった。時は戦国時代。戦乱で敗れた国の雪姫(上原美佐)を、お家再興の為に隣国へ送り届けようとする真壁六郎太(三船敏郎)。200貫の御用金とともにいかに敵陣を突破するかで、終始ハラハラさせられっぱなし。しかも姫はわがままで世間知らず、お供は欲に目がくらんだ頼りない百姓二人(千秋実と藤原釜足)。奇策と度胸で次々と危機を乗り越えていく様が、たまらなく面白い。脚本が練りに練ってできあがったものだとよくわかる。

 ジョージ・ルーカスがこの映画に魅了され、千秋実と藤原釜足のコンビが「スターウォーズ」のC-3POとR-2D2の元ネタにしたというエピソードが有名だけに、ファンはどうしても「SW」の影をそこに探してしまう。ルーカスは砂漠で2体のロボットがけんか別れする場面でモデルにしたとされている。その場面は冒頭いきなり登場。劇伴のコミカルな音楽さえ、それらしくきこえてしまう。また、お姫様を守って冒険をする物語そのものにちょっと「SW」を感じてしまう。いかんいかん、純粋に黒澤映画を楽しまねば。

 見所は実にたくさんあって言い出したらきりがない。金塊探しに城に連れてこられた男たちが蜂起する場面のド迫力。火縄銃でねじ伏せようとする侍たちに襲いかかる群衆。騒ぎから逃れた凸凹コンビが山中で金を拾い、そして真壁と出会ってから話は少しずつ前に進み始める。世間知らずで口が達者な雪姫を無事に送り届ける為に、姫に聾唖者を装わせるという設定。いつバレるのだろうとハラハラしっぱなしだ。途中で一行に加わる娘の存在や物語上での使い方も実に巧い。無防備に眠っている雪姫を、凸凹コンビが襲おうと企む場面(上原美佐のすらっとした足がぞくっとする程きれい!)、道端の侍の会話から一緒にいる人々の素性を知ってからの娘の活躍。追っ手から手傷を負わされ、真壁に手当されながらの「もったいのうございます。」という一言、敵陣に捕らえられてからも「私が姫だ」と言い放懸命さが胸に残る。雪姫が道中を通じて世間を知り成長していくのがまたいいね。全般的に緊迫した場面くらいしかクローズアップがないから、表情からその変化を読み取ることが難しいが、それ故に「楽しかったぞ。」という雪姫の台詞や歌が生きている気がする。

 サスペンス描写のひとつの山場は、やはり”火祭り”だろう。多くの金を薪の中に隠しているだけに目立ってしかたない。大量の薪を運ぶ火祭りの行列に紛れる展開は、その少し前の真壁の台詞「石を隠すなら石の中。人を隠すなら人の中だ。」が見事に活きている。だが、それを燃やす訳には・・・その窮地を乗り切る発想の見事なこと!。火祭りの歌や踊りが日本古来のものとは思えない印象を受けたが、それはよしとして(僕は北野武版「座頭市」のタップダンスを思い出したが)。それにしても祭りを楽しむ雪姫の様子が実にいい。一方で金がどうなったのか気になってしかたない二人組の微妙な表情・・・。そしてクライマックスの大脱出!。「裏切り御免!」って痛快だなぁ。いやはや参りました。肩の力を抜いて観られる痛快時代劇。娯楽映画はこうでなくっちゃ!。
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