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囚われの女のEyesworthのレビュー・感想・評価

囚われの女(2000年製作の映画)
4.6
【不可侵領域】

シャンタル・アケルマン監督の代表作。

〈あらすじ〉
シモンはパリの豪邸で祖母とメイド、そして恋人のアリアーヌと暮らしていた。アリアーヌを心の底から愛していたシモンだったが、その強い愛情を募らせるあまり暴走し、ついには彼女の尾行をはじめるようになる。こっそりと彼女の行く先々に着いていくうちに、いつしかアリアーヌが自分ではなくとある女性と愛し合っていると信じ込むようになるシモン。とうとう彼女に別れを切り出すが…。

〈所感〉
あらすじを見ていなかったので、シモンが最初ひたすら女性を追跡していたから成程これはストーカー男が重すぎる愛のために女を監禁する話なんだと思っていたら、普通にバスルームでガラス越しに話していて驚いた。そしてそのシーンが非常に官能的であり、この映画そのもののような示唆的な場面である。二人の会話はずっと何かに遮られていて、どちらの言葉も室内に反響するだけで相手の脳内には届かない。言葉が一方通行なのである。シモンはアリアーヌと全ての考え方、感じ方を共有できると思って話しているが、一方アリアーヌはシモンとは鼻から話が通じるわけが無いと諦めているように見える。この思考、感覚の違いが2人をずっと距離の隔たったカップルに見せているようだ。別れたいのか別れたいのかハッキリしないシモンが女々しいし、女々しいが故にアリアーヌが女性とイチャイチャしているのが気に食わないのだろう。彼はは世の規範的な男像とはかけ離れているように見えて、考え方が傲慢であり、パートナーを支配し服従しその全ての行動を監視下に置きたいという頑なな強さが見られる。アリアーヌは自由恋愛主義者だが全ての行動が場当たり的で無意志的でシモンと対局の存在なのが面白い。ラストのシモンの表情が己の間違いを悟ったのか?やはり彼女を責めているのか?人には踏み入れない領域が必要であると感じる。知りすぎてはいけない。男女の関係には一生答えが出ないなぁ。アケルマンの映画は分析対象として非常に勉強になるなぁ。
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