「カリガリ博士」(1920)や「サンライズ」(1927)の脚本家カール・マイヤーによる無字幕・室内悲劇三部作の最終作であり最高傑作とされている一本。監督は三部作の一作目「破片」(1921)のループ・ピック。
大晦日のベルリン。夜の街は多くの人で賑わっていた。街角で大衆酒場を営む夫婦の元には夫の老いた母親が招かれていた。ごった返す店で給仕する間をぬい、三人と赤ちゃんで幸せな除夜を過ごしていたのだが、ふと並んだ写真を観た母親が腹を立てはじめる。一枚は夫婦の写真。もう一枚は自分と息子の写真。急に息子を奪われたような気持になり嫁に文句を言い始めるのだが。。。
異様な作品だった。物語は嫁姑のいがみ合いが生む悲劇なのだが、間に頻繁に挟まれるインサート映像が異様なのだ。ひとつは大晦日の街の喧騒を捉えたもの。これは魅力的な映像で夜の街をゆっくりと移動撮影することで、きらびやかな魔都を幻想的に映し出している。主人公たちの部屋との対比としても有効だ。問題なのは唐突な”波”の映像。除夜の街と不釣り合いすぎてシュールにさえ感じる”波”が何度も挟まれている。嫁姑の怒りの心情風景とこじつけることもできるが、それにしてはフィルム着色が寒々とした青色なのでどうも腑に落ちない。
この”波”の映像があるために、本作にはアート映画の印象が残る。「戦艦ポチョムキン」(1925)に先駆けた知的モンタージュなのか?大自然に比すれば除夜の喧騒も嫁姑のいがみ合いも本当にちっぽけなことだとは感じさせられた。しかし自分の考えすぎとの思いも頭をよぎっている。