HeartFull

コラテラルのHeartFullのレビュー・感想・評価

コラテラル(2004年製作の映画)
4.2
異例づくしの本作、まずトム・クルーズがロマンスグレーという黒髪以外のトム・クルーズを拝むことができ、何より悪役として描かれています。今回のトムは饒舌で他の作品では見ない言い回しや例えをします。そしてびっくりするのが脇役として出てくる今ではビッグな俳優人達、刑事役にマーク・ラファロ、冒頭のパシリで一瞬登場するジェイソン・ステイサム、情報をくれる役のハビエル・バルデムは全然気づきませんでした。

マックスはタクシー歴12年、ヴィンセントはフリーになって6年、専属で何年やっていたかは語られていませんが、見た目から判断して40代以上とすれば、この道にしては短いような気がします。ですが、銃の腕は素晴らしいので何か過去があるように思いました。それはマックも語らそうとしない場面があったので過去に曰く付きの二人がたまたまではなく、ヴィンセントが言っていた通り運命的な出会いだったのかもしれません。
ヴィンセントがマックスのタクシーを貸し切りにしたのは、最初の目的地に行くときの彼の仕事への態度だと思います。仕事に真面目なやつは信頼できるとゴルゴ13が言っていました。

そしてこの劇中でヴィンセントに巻き込まれた形でですが、12年間タクシー運転手を続けて、成長した以上の成長を1夜で遂げました。その理由は、今まで経験したことのない経験よりもヴィンセントとの会話だと思います。マックスは12年間乗客を毎日乗せて、様々な会話をして、そして彼は会話の中で自分のことを聞かれるとアニーやヴィンセントにしたようにタクシーは腰掛けで、夢はリムジンの会社をする事だと語ってきたでしょう。道に詳しく仕事に真面目な彼の話を馬鹿にする人は少なく、仮にいたとしても一度会っただけの見ず知らずの他人で嫌なやつ程度ですぐ忘れることができたましたが、ヴィンセントは違いました。ヴィンセントはマックスがこれまで出会ったことのない種類で、人の心を持たない人間です。そんなヴィンセントに母親にまで面会されるほどの深い関係になったマックスに新たな価値観、考え方を披露された挙げ句、自分の夢の核心を突く指摘は、マックス自身薄々気付いており、必死に言い聞かせるように隠していました。それをあろうことか劇中最も嫌いな人物に指摘され何となくで流されて生きてきたと本音を語り、一気に態度を豹変させます。ここでマックスはヴィンセントによって殻を破り成長したと思います。

ラストシーンでの疑問としてヴィンセントの腕であれば素人のマックスとの撃ち合いに負けるはずが無いのにも関わらず、マックスは傷一つおっていません。これはクラブのときも敵からマックスを助け、刑事まで殺し再び運転させ、暴走するマックスを撃ち殺さず死ぬのも恐れないマックスの暴走に付き合った所から見るにラストの撃ち合いではヴィンセントはマックスではなく、あくまでもアニーを狙い、自分の身はマックスに委ねるというのはマックスのタクシーに乗ったときから終始一貫していたのだと思います。そしてヴィンセントを見つめるマックスの顔は、早く消えてほしいくそやろうである一方、腹を割って話すことができた唯一の人物で、自分を成長させ消えていく人間への哀愁と感謝、そして安堵と捉えました。
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