このレビューはネタバレを含みます
魔女伝説のドキュメンタリーを撮影する大学生の話。
有名な作品ながら未見だったので見てみたのですが、なるほど、こういう作品だったんですね。
まず印象的だったのは、映画作品と思えない程の画質の悪さ。
家庭用ビデオカメラを使っているとはいえ、ここまで荒い映像を見せられるとは、少し驚きでした。
ただ、このビデオカメラ特有の質感や撮影の拙さがリアリティーを感じさせるのも事実だし、有名俳優も出てこないので、本物のドキュメンタリーを見ている気持ちにさせられます。
モキュメンタリーは作為性を感じると一気に冷めてしまうものですが、本作に関しては、そうした部分はあまり感じなかったかな。
このリアリティーの徹底は物語の部分にも言えて、本作は魔女を題材にしながらも、実際に魔女が出てくる事はありません。
殺人鬼や幽霊がジャンプスケアしてくる事もなく、ホラー要素は怪しげな音や痕跡が出てくる程度に止めている。
これがまた絶妙で、魔女による呪いや悪戯の様にも見えるし、大学生達の聞き違いや勘違いの様にも見えるので、リアリティーラインが崩れる事はないんですよね。
ここまでリアリティー重視だと、怖さがなくなる気もしますが、そこは観客の想像力に委ねられているのでしょう。
例えば、テントの外にあった積み石も気のせいだと思えば、それまでですが、あそこまで魔女が接近していたのだと考えると、メチャクチャ恐ろしい。
そういう意味では、想像力が豊かで、考察が好きな人ほど楽しめる作品なのかもしれません。
個人的には、ホラー映画というよりも、モキュメンタリーとしての強度の高さに感心してしまったし、撮影クルーの一員になったかの様に没入して見てしまいました。
撮影クルーが不安とストレスでイライラしてくるのも嫌な感じで、欲を言えば、もっと登場人物を増やして、狂っていく人間を描いても面白かったんじゃないかな。
近年はモキュメンタリー型のホラーが増えてきていますが、本作程にリアリティーを追求している作品は少ないし、「想像させる事で怖がらせる」という、このジャンルの本質を掴んでいるのも凄いなと。
後続作品の雛形となった事も頷けますし、これからモキュメンタリーを作る人には是非参考にして欲しいですね。