菩薩

宇宙飛行士の医者の菩薩のレビュー・感想・評価

宇宙飛行士の医者(2008年製作の映画)
4.4
『神々のたそがれ』』、アレクセイ・ゲルマン監督の息子さんの作品。2008年、ヴェネツィア映画祭監督賞受賞作。ユーリ・ガガーリンが宇宙に飛ぶまでの6週間が、宇宙飛行士の健康管理に携わる医者の目線から描かれています。

パパ譲りの映像設計と言いますか、例のごとく、カメラと登場人物が複雑に動き回るリハーサル大変そうなあの雰囲気がこの作品にもあります。ツバも吐きます。それでも『神々のたそがれ』のような「いや、何言ってんだかちょっと分かんないっす」って感じはあまりなく、国家の為に若者の命が犠牲になる事に対する医者の葛藤と苦悩、未来が見えぬ不安とが淡々と描かれています。もちろんその中には、パパと同じ様に、ソ連(ロシア)社会の混沌とした社会情勢と批判的精神が反映されているのだと思います。

選ばれる側だった人間が、選ぶ側に回った途端にその意義に疑問持ち、目標を達成した途端に閉塞感に見舞われる、と言ったところでしょうか。

シンプルなストーリーなので、『神々のたそがれ』に嫌気を感じてしまった様な人にもオススメです。逆にあの感じをもっとくれ的なMっ気たっぷりな人は、少し物足りなく感じるかもしれません。観る人によって色々と解釈が異なる作品になると思いますが、ロシア映画らしい美しい作品でした。パパゲルマン作品に挑戦する為の予行練習にもなる作品だと思います。
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