Taketo

宇宙飛行士の医者のTaketoのレビュー・感想・評価

宇宙飛行士の医者(2008年製作の映画)
3.3
 1963年のソ連が舞台。宇宙飛行士計画に従事している医者のダーニャは将来の宇宙飛行士を育成するべく、候補である士官達の健康管理の責任者であり、宇宙にいく士官を決める決定権を持っていた。
 しかし、ダーニャは国家の発展の為に若い士官達の命が犠牲になる事に疑問を抱き悩んでいた。そのため時に激しい頭痛に悩まされていた。
 ヴェネツィア国際映画祭の金のオゼッラ賞を受賞しているだけあり、映像は独特。常に長回し気味の映像の中に登場人物が出たり入ったりする。相当カメラの動きと登場人物の配置を考えないと出来ない撮り方なんじゃないかなと思った。カットによって空間を作る事は無く、被写体との距離もひとつのカットの中で変化するもののロング→ミディアム→アップのようなカットの積み重ねは無い。それによってゆったりとしたテンポになっていると思った。
 どこまで事実どうりなのかは分からないけれど、宇宙飛行士の葛藤ではなくその医者の葛藤による物語という設定は面白かった。
 士官達は戦争に行くように国の為と思って、宇宙に行く事に納得している。それに対して少し距離を置いた存在だからこそ国の主義や思想などと言う事で悩んだんだと思う。序盤の方では、ダーニャの妻ニーナがある士官に「本質的には意味はないの」のような事を言っている。
 ダーニャの父親はダーニャの頭痛に対して、「相反する物の所為だ。だから人工知能は矛盾する事を与えると壊れてしまう。」
 ダーニャも矛盾する事の中で壊れていったんだと思う。
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