Kuuta

最高殊勲夫人のKuutaのレビュー・感想・評価

最高殊勲夫人(1959年製作の映画)
3.7
最後のバーのシーンとこの写真の素晴らしさで若干平均点が上がっている気はする

・ハイスピード、ハイテンションなラブコメ。押して押して押しまくる。人も物も動き続け、電話もひっきりなしに鳴る。情報量で麻痺してしまいそうになるが(ストーリーの理解は正直曖昧)、台詞のリズムが心地良く、だれずに聞けてしまう。

・人物を一対一にしないで、無関係な人を画面に入れる。話者同士を切り返さず、ミドルショットの中で会話させる。乾いたカメラの置き方も、コッテリな演技や台詞とうまくマッチしている。

・「絶対に結婚しない」と誓い合った男女が結局惹かれ合う、という内容。昭和の街並みとエネルギッシュな生活感がとても魅力的だ。男女のすれ違いものとしてはもちろん、自分の気持ちを大事に突っ走る杏子(若尾文子)と、それを寂しげに見守る父親(宮口精二)の対比も効いている。

・ラストのバーの場面、最初はミドルショットで2人の間には距離があるのだけど、決定的なセリフで珍しくカメラが寄る。単独で画角を占有する杏子と三郎(川口浩)が、それぞれきちんと切り返される。普通の映画では当たり前の映像なのだけど、今作の流れで見るととても緊密なコミュニケーションに感じる。

父親が花婿候補2人にビールを注いでもらっている時の笑顔にも、このシーンと同様に寄りが使われているものの、ここでは杏子の表情は切り返されず、場面は途切れてしまう。

・電車で噂話が広がるシーン、フラれた男がステージに向かうシーン。見られていないつもりが見ている人はいた、という視線の交差がドラマを動かす。

・丹阿弥谷津子演じる杏子の姉は、世の中全てを自分の欲望に従わせようと暴れる増村作品っぽいキャラクター。
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