みんと

舞踏会の手帖のみんとのレビュー・感想・評価

舞踏会の手帖(1937年製作の映画)
4.2
いろいろ見どころ満載の素晴らしい作品だった。とても情緒的でありながら何処か詩情すら感じる、地に足ついた真面目な作品と言うか。

20年前16歳で社交界デビューした主人公クリスティーヌ。未亡人となった彼女は当時の手帖に記された、かつてダンスを共にした男性達を訪ね歩く旅に出る、、、

個性豊かな男性達との再会エピソードが、リアリティたっぷりに描かれてゆく訳だけれど、全てに濃厚なドラマがあってオムニバスとしてもしっかり確立されてる。

とりわけ闇医者ティエリーのパートの見応えは素晴らしかった。心の不安定さを絶妙な斜めな構図で炙り出す、しかもギシギシと不快な機械音とも相まって一際居心地の悪さを感じると共に秀逸さも。
またスパッと途切れるそれぞれのストーリーの全てが手を抜くことなく、またメインストーリーにもなり得る完成度。

僅かな日常の不満とか、選ばなかった人生への後悔とか、誰しも人生の途中で遭遇する一瞬の迷いは、ひとつの人生しか全う出来ないからこそ美しい。そして最終的にコレで良かったと思える人生は幸せだ。

過去を巡って幸せになれるとは到底思えないし過去の栄光にしがみつく生き方なんて虚しいだけ。記憶は記憶のままで、上書きする必要は無い気がする。

最終的になるほど!なラストの締め方は粋でもあり、清々しくも感じた。そして、こうしてレビューしながらどんどんスコアが上がってゆく味わい深い一作になった。
みんと

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