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惑星ソラリスのbennoのレビュー・感想・評価

惑星ソラリス(1972年製作の映画)
4.9
タルコフスキー監督作品3作目。
バッハのオルガン曲をバックに冒頭、沼からの妖しく美しい映像。

綺麗な映像を撮る監督さんは多数いますが、やはりタルコフスキーは別格、美しさのみならず、難解ではありますがそれらに意味を持たせメタファーとしての娯楽性の楽しみも含みます(私には)。

ただ、一番厄介なのは、タルコフスキー作品のレビュー!しっかり咀嚼して言葉にするのも難解ですが、そうすることに全く意味を持たないのも難点。

今作は、とても雄弁な対話形式のストーリー仕立て。SFの設定ではありますが、特に科学的なことをする訳でもなく、人間の精神世界のお話です。

なんと、ビックリ!日本の首都高の映像が…
"コロナ" "観光バス" "飯倉"…の看板。
ナトリウム灯に電子音…POV的な感じで不思議なトリップ感覚…
意図的に半覚醒状態を作り出しているかのようで…

宇宙ステーションでの映像も見事。チープ感と無機質の融合、これまでにない緩慢なカメラワーク。
極め付けは図書室での30秒の無重力状態!

結局のところ内容は…
『セックス』からの『堕落』からの『恥』からの『自省』……何のこっちゃ??

SF要素は担保しつつ、人間の愛と内面を抉った作品…胸の奥深くに澱む過去の過ち…人間の理性は得られたはずの愛への渇望によって揺さぶられてしまう…

実体を持って現れたあまりにリアルな幻影…それを偽物だと退けることが出来るだろうか…

ラストはやっぱり魅せます!
驚愕のシーン!
この喪失感は凄いです、参りました!
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