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十三の眼のtosyamのネタバレレビュー・内容・結末

十三の眼(1947年製作の映画)
4.3

このレビューはネタバレを含みます

開巻。ナダレのように陽気なジャズから悲劇的な殉職シーンそして警察葬から科捜研まで。とシリアスハードな事このうえない。前作は一寸タカラヅカなヒッチコックミステリースタイルだったが続編の本作。大好物のオトコっぽいハードボイルド調。そのうえ二作目にしてダークヒーロー誕生秘話の亡き恩師雪辱編。これをフィルムノワールと言わずしてなんとしよう。隠れ名作の大収穫だった。と思いきや。うれしい誤算。舞台はオモテムキはキャバレービルだが実は戦災孤児や戦争未亡人など不幸な女を飼い殺すカジノ兼巨大売春宿。女体売買秘密結社男尊女卑カルト宗教そのアジトでもある。今作。多羅尾伴内シリーズ中のかなりの異色作とみた。単独名作化可能。売春婦たちの群像反乱劇かつ被害者遺族の復讐譚っぽく。単純なフィルムノワールでもファムファタール物でもなかった。ここまでの展開は新東宝の○線地帯シリーズにもなかった。それ以上のシロモノ。女性解放映画だった。クライマックス。女たちメデタク誰も死なない。主人公。藤村大造も本来の義賊に原点回帰しスーパー探偵というより今回は不幸な女たちの単なるリーダー役。アラビアのロレンス。か。とはいえフェミニズムも革命思想もカケラもなく男の恩義忠義だけが彼の行動原理ってとこがサムライ。かくして悪のダンジョンビルにチームで乗り込む。早すぎるワンシチュエーションサスペンスのジャンルまでをももはや形成して。そのスリリングなロールプレイングは塔の上へ上へ。戦い終わって帰路が薄明の非常階段ってのが又ノワールしてる。まるでブルースリー死亡遊戯。チームプレーとしてみれば。まるでナバロンの要塞。屈折した極私的偏愛かもだが。とんでもない大傑作だ。そして実験的大失敗作でもあろう。でも。まさにパート2映画の見本のようなブットビ度。
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