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二百三高地のtapiokapanのレビュー・感想・評価

二百三高地(1980年製作の映画)
3.5
 一言で言うと時代劇ノリの戦争映画。今の目では古臭く見えるが日本人にわかりやすい描写が多く感情移入しやすいのではないだろうか。流石に古い映画なので格闘や演技はまさに時代劇のそれであるし、効果音や特殊火薬効果もリアルではない。しかし第二次大戦時の復員兵が珍しくなく、幼少期に日露戦争を体験した年代の方も生きていた時代なだけに現代の戦争邦画よりも戦争の空気感が出せている気がする。しかし挿入歌は他の戦争映画では殆ど見られない演出であるし、たかが映画の芝居、それも実在の人物の死を偲ぶのではなくオリジナルキャラクターが死んだタイミングでやるのはわざとらしすぎて笑ってしまった。このわざとらしさも昭和の映画の味の一つかもしれない。

 この映画では末端のフィクションの徴収兵と、実在の乃木司令官等の上層部それぞれのシーンが用意され、更に僅かだが情勢や地図を使った解説も入るので決して詳細ではないが状況が把握しやすく親切である。戦後である事と防人の詩を挿入歌に選んでいるところから察する通り反戦映画であるので悲劇的な側面がクローズアップされ、辛勝したものの問題が多かったという描写になっているのだが、実際にはこの旅順攻囲戦は近代的な塹壕+機関銃という組み合わせでの史上初の試みであり、決して陸軍の司令部が無能だった訳ではなくむしろ柔軟に戦法を変え対応していたと評価されているし、劇中では突撃ばかりが強調されていたが実際には砲撃が重視されていた。またクリミア戦争で塹壕戦を経験した強みを生かし列強各国が採用に二の足を踏んでいた機関銃をいち早く採用し、強固な要塞を築いていたロシア側もかなりの先見性を備えた強敵であった。作品中では日露戦争の山場であった二百三高地攻略までに時間を割き、その後はあっさりとした描写になり旅順におけるロシア軍の白旗降伏や奉天会戦は描かれない。
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