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ハクソー・リッジのtapiokapanのレビュー・感想・評価

ハクソー・リッジ(2016年製作の映画)
3.2
 舞台は1945年の沖縄戦・前田高地の戦い。この戦闘では旧日本軍側は高地の地下にアリの巣のような陣地を張り巡らせていて、米側の砲撃が始まるタイミングで地下に退避、砲撃後はすぐに米軍が登ってくるので応戦する為に飛び出して近接戦闘を繰り返す「ピストン作戦」を行っていたのが米軍の苦戦の要因だが、米軍視点の作品なので詳しい描写は無し。また作品紹介では「最終戦地」とか書いてあるけど史実ではこの後に首里攻防戦が行われ、シュガーローフ・ハーフムーン・ホースシュー等は米軍側に相当な出血を強要している。実話をベースにはしているが映画映えを重視して米側の登場人物もいくらかの改変が加えられている。

 映画的な見どころは主演俳優のアンドリュー・ガーフィールドで、素顔でも深刻そうな顔立ちなので雰囲気にマッチしている。他にも様々な戦争映画、例えば顔芸で状況を表現するしかない潜水艦映画でも活躍できるだろう。またグロ描写が多いセットや効果も迫力があるが、しかしながら戦闘シーンに移った瞬間に拍子抜けすることになる。ある兵士は味方の死体の上半身(ざっと数十キロ)を無理な姿勢で片手に持ち人間の盾として使い、もう片手で軽機関銃(重量8kg程度)を持ちつつ転ばずに走りつつ、その装弾数が20発しかない軽機関銃(BAR、M1918)を弾倉交換なしでざっと60連射、しかもことごとく日本兵に命中させるという人知を超えたパワーを発揮し、また他の兵士は装弾数30発のサブマシンガン(グリースガン)でざっと異次元の60連射したり、日・米軍共に機関銃の一掃射ないし一発の手りゅう弾で全滅しそうなくらい密集隊形だったり意味もなく立ち上がって良い"的"として振舞う事で伝説化している「コマンドー」並みのおバカ映画になってしまう。

 後半の戦闘シーンのマズさによって一気に愉快な気分になってしまう映画だが、戦闘中の演技以外の部分は全体的に雰囲気は良く出来ていて米軍側の苦戦がそれなりにうまく表現されている。太平洋戦争末期の沖縄戦であっても日本軍側はそれなりに米軍に出血を強要していたことがわかるのではないだろうか。
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