もめん豆腐

博士の愛した数式のもめん豆腐のレビュー・感想・評価

博士の愛した数式(2005年製作の映画)
4.0
だいぶ前に本を読んで、その後映画を観たパターン。博士役に寺尾聰さんがキャスティングされた時は違和感しかなかったが、いやいや、蓋を開けたら彼が一番しっくりきていた。会うたびに同じ質問をする、あの「なぜ?誰?」は演技に見えない。さすがは宇野重吉の息子よのう。
これは、あったかくてやさしい気持ちになれる映画。出てくる人にどうしようもなく意地悪な人はいない。すれ違いはあるけれど、みな自分の人生を生きているからこその軽いすれ違いだ。
観てからかなり年月が経ってしまっていたから、登場人物たちの背景はほとんど覚えていなかったが、√のお母さんは一人で√を産み育てているし、博士の家の母屋に一人で住む女性は義弟との道ならぬ恋の末に事故に遭い脚が不自由になり、博士は記憶力を失い、互いに大きな犠牲を払った。
だが。ラストは決して不幸ではなかった。男と女の恋情による打ち上げ花火はなかったけれど、手元にジリジリと咲く穏やかな線香花火のような幸せは手に入れることができたと思う。
ところで義姉はこれまでどんな家政婦も気に入らなかったようで、その理由は定かではない。この√親子も恐らく嫉妬によって解雇されたに違いない。けれど既に記憶がないとはいえ博士と√との間には友情が芽生えており、会いたい気持ちを抑えることなんて出来やしなかったのだ。

あてくしのお気に入りシーンは
・君には子どもがいるのか(定期)
・こんな時間にこんな所にいては、これからどんどん暗くなるじゃないか
・こんな所でご飯を作っていたら子どもがご飯にありつけるのは20:30だ
◎よし、お祝いしよう。子どもには祝福が必要だ
無条件に√を愛する博士。その言葉の一つひとつに愛がこもっている。きっと博士がお父さんになったら最高の父親になっていただろう。そう、世の中は世知辛い。親になるべき人がなれず、なんでお前が…って奴がなってる。
一つ残念なのは吉岡秀隆さんの役。原作にもあったかもしれないけど、ごちゃごちゃうるさいし、説明臭いし、声が高いし、何か嫌だったので、彼が出てくるシーンは全てかっ飛ばした。だっていらないんだもん。すまぬ。


「この木戸は、これからはいつでも開いています」
木戸も心も全開放すると気持ちいいよね。
もめん豆腐

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