小説の方を読んで(というか聴いて)、映画の方はどんなものだろうと思って見てみた。だいたい小説の通りだった(大人のルートの数学授業があるところだけちがう)。
数学には時間というものがないから、今が永遠につづくようなものなのかな。それでも博士は生身の人間でもあるので、記憶が続かないことで時々ひどく苦しむこともある。一方で、お姉さんの方は罪の意識に引きずられて、過去にいつまでも縛り付けられている。意味合いは違うけど、2人とも時間が止まっているとも言える。その時間を動かしたのが主人公母子だ。
ただそれは、時間を未来の方に動かしたというよりも、どちらかといえば、強張りをほぐしたと言った方が適切かもしれない。ラストでは、無数に波が打ち寄せる永遠の現在のような浜辺で、過去の博士と現在のルートがキャッチボールを繰り返す。
ところであの数学授業は現実世界ではないということなのかな? 校舎のすぐ外が浜辺というのは非現実的だし、生徒の反応が異様に素直すぎるし。授業終了後、なぜか生徒たちがいっせいに教室から出ていくあたりもなかなかシュールだった。