櫻イミト

アメリカの悲劇の櫻イミトのレビュー・感想・評価

アメリカの悲劇(1931年製作の映画)
3.0
「陽のあたる場所」(1951)のリメイク元。監督は「嘆きの天使」(1930)「モロッコ」(1930)のジョセフ・フォン・スタンバーグ。原作は1906 年に起きた“グレース・ブラウン殺人事件”に基づく同題小説(1925)。「暗黒街の弾痕」(1937)のシルヴィア・シドニーの初期作。

貧しい人のための救護所を営む母の元で育った青年クライドは、叔父の衣料会社に就職する。やがて職場の女工ロバータ(シドニー)と恋仲になるが、上流階級の女サンドラに見染められロバータが邪魔になる。そしてある日、ボートで彼女を誘い出すと妊娠を告げられ。。。

20年後の「陽のあたる場所」と大まかなプロットは同じだが、テーマと演出が違うため受ける印象も全く違った。同作の主人公には道徳心と野心との葛藤があり、テーマは現代アメリカ人の自己欺瞞だったように思う。一方、本作の主人公は最初から道徳心に欠けており、テーマはその原因たる社会的貧困のように思えた。。

両作とも実際に起きた事件をモデルに時代批評を込めたもので、そのテーマの違いが興味深い。ちなみに映画の完成度としては「陽のあたる場所」にはずば抜けたものがあり個人的にも同作のほうが好みだった。

ヘイズコード前の作品で、ヒロインの末路の描き方も映画に影響を与えている。
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