櫻イミト

ナイトチャイルドの櫻イミトのレビュー・感想・評価

ナイトチャイルド(1975年製作の映画)
3.5
イタリア古代都市の景観が残るスポレート(Spoleto)で撮影された70年代オカルトホラー。主演は“イタリアの怪奇少女”ことニコレッタ・エルミ(当時11歳)。監督は「ソランジェ/残酷なメルヘン」(1972)のマッシモ・ダッラマーノ。原題は「Perché?!(なぜ?!)」。

※マーク・レスター主演「ナイト・チャイルド」(1971)と間違えやすいので注意。

【あらすじ】
英BBCのディレクターをつとめるマイケルはイタリアの美術コレクターから送られてきた絵画写真に目を止める。描かれているのは魔女裁判で火あぶりされる少女。その姿は火事で転落死した妻を連想させた。そして、娘エミリーも母の焼死を思い出す悪夢に苛まれていた。マイケルはこの絵に関するドキュメンタリーを製作しようとエミリーと子守のジルを連れてイタリアに向かう。絵の所有者で霊能者のカペッリ伯爵夫人は「この絵には、魔女狩りの犠牲になった少女エミリアの怨念が込められている」と語り、マイケルに深入りしないよう忠告する。一方エミリーは、自分が魔女裁判にかけられている幻覚を見始める。。。

同監督の「ドリアン・グレイ/美しき肖像」(1970)がイマイチだったので不安だったが、意外に楽しめるゴシック・ホラーだった。

ロケ地の古い町並み、「少女火あぶり」の絵画とその展示室、エミリーがお守りにする母の形見の五芒星ペンダント、どれもカラーのゴシック映画では最高レベルに雰囲気満点で大好物。テーマ曲の悲しげなメロディも少女ホラーにマッチしてムードを高めている。

魔女狩りの幻覚がフラッシュバックする際に挿入される無機質なノイズ音が怖い。撮影も抜群のロケーションを良く活かしていて、主観ドリーや落下の合成処理などにも気合が感じられた。シナリオの展開はテンポよく、しかしこけ脅しのホラー演出は用いられない。不穏な雰囲気で魅せるタイプの耽美系の演出に感じられた。

少女に何かが憑依する点で「エクソシスト」(1973)の模倣作のひとつと指摘する声もあるが、本作は特殊メイクなどを用いる派手なホラーではなくサイコ・ホラーなので印象は全く違うと思われる。オカルトの絡むストーリーではあるが、超常現象は霊能者カペッリ伯爵夫人の背後にひとりでに剣が飛ぶ一度きりであり、実はそれも夫人の霊視と解釈することもできる。個人的に本作の真相は、娘エミリーのファザー・コンプレックスが引き起こしたものと考察した。とすれば本作は、ホラー風味のジャッロと括ることもできそうだ。

ニコレッタ・エルミの熱演も光る怖すぎないサイコな耽美ホラー。怖いホラーを期待する向きには物足りないかもしれないが、個人的にはロケーションだけでも観る価値充分なお気に入りの一本となった。
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