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ジンジャーとフレッドのchinechanのレビュー・感想・評価

ジンジャーとフレッド(1985年製作の映画)
5.0
泣けました。人生への愛を感じる映画。

往年の名ダンスコンビ、ジンジャーとフレッド。のモノマネ芸人、アメリア(ジュリエッタ・マシーナ)とピッポ(マストロヤンニ)が、公私共に別れを告げてから30年の時が過ぎ、あるクリスマスの夜にモノマネ芸人を集めた特番に呼ばれて再会する、その丸1日を描いた話。

まず、クリスマスの夜っていう設定がいいんですよね。そのきらびやかさ、世間が浮き足立った日に、テレビというキラキラした場、かつモノマネ芸人特番という異様に空虚に感じられる場で、美しい自分の過去と向き合うっていうことの対比ですよね。このちょっとした滑稽さって、実は人生にとって重要な要素なのだと思います。滑稽で虚しくて帰りたいんだけど、理由をつけてなんとか生きてく、っていう。正直、合わない空気感とか、人がやるのはいいけど私は勘弁してください、みたいなのって誰にでもあると思うんですけど、そんな時もみんな実はちょっとずつ腹を括っていろいろ考えながら生きてるっていう。
本題から外れましたが、、

フェリーニらしさは混沌とした画面構成から溢れていて、健在で、前日の夜のカオスな感じ(クラブにみんな出かけていくシーンとか)、当日の楽屋、番組始まってからの舞台裏の描写全て素晴らしい。実年齢も60を過ぎたマストロヤンニの非常に寂しくなった頭頂部が現れた時は、ショックを隠せなかったけれど、そんなことどうでもいいくらいに名演技かましてくれます。自分の立ち位置もどう見えてるかも分かってる、 本当にいい俳優だな。

もうね、決してダンスうまいとかじゃないんですけど、これは名ダンスシーンでしょう。マストロヤンニの足のもつれ、見事な転倒、なかなか見れませんよ。もう素晴らしすぎる。2人が舞台で踊るとこ、終わったあとの号泣、駅での別れ。全て手に取るように伝わってきて、人生とはこういうものだ、と。

そして、時代はいつの日もすぐに過ぎ去って、過去のものになる。「今やマニアの心の中にしか残ってないのさ」、というマストロヤンニのセリフが言い得ています。

こういう人生への愛が溢れる映画、好きすぎます。フェリーニ作品たくさん観た後に観た方が、更によいかもです。彼自身、そして俳優さんたち自身の人生の流れも感じるために、より深みが増すと思います。
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