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僕たちは世界を変えることができない。 But, we wanna build a school in Cambodia.のamuのレビュー・感想・評価

4.0
2011年製作だから、今から9年前の作品。
物凄い豪華な主要キャスト4人。豪華というだけでなく、あ、この組み合わせで共演していたんだという、まずそのキャスティングだけでも無条件に観たいと思わせられた。が、タイトルと少し入れたレビュー情報からテーマが自分にとってピンとこなかったために入りが(観ることが)ずっとずっと後回しになってしまっていた。募金箱を見ても、集めている元締めに回収されてしまうのでは、悪用されるのでは、と疑ってかかってしまうところがあったり、ボランティアの類は一生付き添えないなら同情からその時だけ手を差し伸べるなど逆に残酷なのではないかと考えてしまったりして、諸外国の不幸だとされる地域のために自分が行動するということが、冷たいかもしれないけれど要するにピンときていなかったのだ。

ところが実際に観て、これが外出自粛の今の情勢で無かったら私はすぐにカンボジア行きのチケットを取りそうな勢いでうずうずした。じっとしていられないような、何かしなくちゃ、自分から行動しなくちゃ、と居ても立っても居られないような感情が湧いた。

きっと当時大学生だった彼らも、何がきっかけというわけではないが、このままでいいのだろうか人生、、というような平穏な日常に焦りのようなものを感じたところが第一歩なのだろうと思う。

実話を基にしたフィクション作品というと私はこれまで残忍な猟奇殺人事件や、当たり前が歪んでしまった組織の話など、明るいものに触れてこなかったため、この作品の勇気や希望にも似た何か行動を掻き立てられる一筋の光を感じられる作品は初めてかもしれず、最後は涙が止まらなかった。

タイトルから、どんなに頑張っても人は無力、みたいな報われない精神的にしんどい話かもしれない、そうだったら辛いなぁ、と思いながら展開を追っていたのだけど、その無力にも思える小さな行動は、決して無などでは無く、地球上のほんのちょっぴりの部分だけかもしれないけれど、人の心を動かしたり、触れることができた結果、彼ら自身の世界を確実に変えた。この作品を通して、また観る者の心にもそんな想いは触れられ、作中にも出てきた一滴の水があつまって大海となるというマザーテレサの言葉にも通じ、人の持つ力をとても感じることができた。

向井理は、私が観てきた作品でよく泣かされる。特別その演技技術の高さを感じさせずにいるのに、いつも心を震わされる。だからやっぱり巧いんだと思う。

カンボジアには行ったことがないけれど、インドネシアのバリ島に行ったことがある。バイクや徒歩であちこちをまわり、眼に映るのは物乞いをする母子や、ただただ道端に一日中座っているだけのたくさんの男性だった。(女性の方がとにかく働いている印象。お店も、屋台も、レストランも。)現地のタクシー運転手さん(自分のバンで個人的に商売をしている風)と仲良くなり、滞在最終日、夜の便で帰国するため空港に向かうとき、いつもボロボロの汚れたTシャツだった彼が、私たちのためにと真っ白な襟付きのシャツでホテルに現れ、お見送りに来てくれた。私はその想いが嬉しくて、泣いた。

異国の地で、その国の情勢の中で、また生活の中で、皆強く、たくましく生きている。幸せかどうかは他人が決めるものではない。学校に行きたい、白いごはんが食べたい。人それぞれの希望を持って、人それぞれの幸せを抱きしめながら皆生きている。

そんな人の強さと優しさを全身に受けた作品だった。
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