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騙し絵の牙のamuのネタバレレビュー・内容・結末

騙し絵の牙(2021年製作の映画)
2.8

このレビューはネタバレを含みます

ストーリーは普通に面白いと思うのに、エンドロールに暗転した瞬間思わず、う~~~ん…!と声を上げてしまった。

なんだか色々と勿体ない!


もう今ではめっきり少なくなったいわゆる「街の小さな本屋さん」の娘・高野さん(松岡茉優さん)が、勤務する出版社で色々あったけど、本当に彼女のやりたいことは実家含め小さな本屋さんを救うこと!という狙いが実ははじめからあったのならば、速水さん(大泉洋さん)にも見破れなかったこの展開というのはハッピーエンドに感じられたと思う。

だけど実際はそのことに重きを置いている感はそれほど見えて来ないまま最後にバックボーンを持ち出したような印象があり、取って付けた感が拭えず、というのが正直なところ。もっと街の小さな本屋さんの存在を実家だけじゃなくて気にしているような描写やフォーカスしている感があれば、おぉとなったかもしれなくて、うーんとなった。(現在工事中の場所に以前は何があったんだっけ?という描写は暗にそれを示唆していたのか、、違うか、、わかりずらい。)

また、速水さん(大泉洋さん)がジャケ写で位置する通りこの作品の主人公なのであるならば、心情とか視点をもっと速水にしてお話を作ってもらわないと、敵というかライバルみたいな位置にいたのに一番いいところというか急にオチだけ持っていった感じがあり、話の軸がブレてしまって見えた。

松岡茉優さんを主軸にストーリー展開していくのだから、ある種そうきたかという松岡茉優さんの行動と、その先に感じられるであろう小さな本屋さんの希望で締めて欲しかったなと思った。速水はまだ死んでませんよ~感は、死んだと思ったジェイソンが生きていた!みたいなつもりなのかもしれないけれど、そうなるとこれまでの速水の行動や策って悪いことみたいに見えてしまう気がした。純粋に「面白いことが正義!」という思いを持ってやってきたことなはず。なので高野さんのした最後の行動は速水にとって、「あいつ、やりやがったな!(褒め)笑」とか、「一本取られたぜ!(俄然やる気出ます)」みたいなリアクションを取りそうなものを、コーヒー投げつけたり、対抗意識を思わせるようなオチは、やり方はともかくとして保守派よりも確実にこれまでずっと「面白い」行動だったのに、しょぼくなっちゃって残念に感じた。

余談として。
なんでもかんでも駄洒落かよみたいなネーミングセンスが終始とてもダサかった。「K.IBA」とか、「ジョージ真崎」とか。特に「K.IBA」についてはじゃじゃ~ん!的な寄っていくカメラワークもさむかった。いやいやいや、、なにを今更、みたいな。作品タイトルに使われている「牙」とかけてるつもりなのだとしたら(かけてるんだよね?)極寒すぎる。

確か「羊の木」のレビューでも書いたけど、吉田大八監督は「桐島、部活やめるってよ」と「紙の月」が良かったからといって全幅の信頼を置くのは違うのかも、と今作を観ても思ってしまった。時折見せるカメラワークに惹かれるシーンもあったりするのにな、勿体ないなあ。(「K.IBA」のところは0点だけど)


そもそも。まず、作品タイトルが良くない。(原作タイトル通りなのだとしたら監督のせいじゃないけど)

もしこの作品が、画家や絵画の業界話であるならば、作品タイトルに「騙し絵」と表することにも、もしかしたら意味付けを感じられたかもしれないけれど、そういう話では無い上に、見る人の錯覚を利用したトリックアートといったものを作中のやり取りの中に感じられたかといえば、ちょっと違う気がした。一つの絵に2つの別の表現があるという意味で「騙し絵」なのであれば、ある種向いてる方向性は一緒(速水も高野さんも面白いことのために尽力する)ということで、尚更あの悔しがる速水のリアクションはどうなのかなぁと思った。

「騙し合いバトル」という煽り文句にも文句がある。これだけ大勢の登場人物をジャケットに全員載せて「バトル」なんて言われたら、どれほどの心理戦がごちゃ混ぜに繰り広げられるのかと想像してしまうが、イメージしたそれとは印象の異なるものだった。もしそう思わせるのが狙いなのだとしたらそれこそ観る者全てを騙した「騙し絵」じゃないかと思ってしまうよ!

あ、、え、そういうこと?(多分、違う)


あとね。リリーフランキーさんを起用されると急に銃でもぶっ放し出すのかと勘ぐっちゃうので安易にキャスティングしないでください。笑
amu

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