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バルカン超特急のtackyのレビュー・感想・評価

バルカン超特急(1938年製作の映画)
3.5
ヒッチのイギリス時代の最高傑作と言われている作品。 
いつもヒッチの作品は手放しで褒めちぎるのだが、この作品についてはそうでも無かった。

まず、最初の雪崩によるホテルの缶詰状態から、登場人物を順々に上手く紹介するのだが、あまりにも冗長すぎて、何なら、いきなり列車のシーンからでも良かったと思ったぐらいだ。
そして、全体的にお得意のユーモアのセンスも、何故か空回り気味だった。

とは言え、一人の老婆が姿を消すのだが、主人公の娘以外、誰もその老婆を見てないで信じてもらえないジレンマが、とても上手く表現されていた。
犯人側だけで無く、ダブル不倫のカップルは、出来るだけ関わらないでおこうと嘘をつくし、英国紳士の二人組は、クリケットの試合が早く見たいので嘘をつくとか、偶然の条件が重なるところなど流石だと思った。
そして、窓に一瞬に浮かび上がる文字、ハーブ茶の袋、など小物の使い方も素晴らしく、徐々に実は拉致されたのではと言う観せ方も、気が利いていた。

ただ、最後の銃撃戦からは、普通の監督の作品になってしまったようで、この2年後に、ハリウッドで撮った「海外特派員」のスピードとサスペンス感とは、比べ物にならなかった。

ファンによっては、イギリス時代のヒッチのマッタリとした作品も良い、と言う人も多いが、私はハリウッドに移ってからのヒッチの方が、大好きだと改めて思った。

窓に一瞬に浮かび上がる文字のトリックは、「サスペリアPart2」でオマージュされている。
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