はるちゃん

夏の嵐のはるちゃんのネタバレレビュー・内容・結末

夏の嵐(1954年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

ある種のピグマリオン効果なんでしょうか。期待に応えようと振る舞ううちに、理想の男を演じているうちに、もう一人の自分ができてしまった。それで騙すつもりが本当に好きになっちゃったんですかね。何より伯爵夫人に相応しい男として扱われる自分自身を好きだったのかもね、鏡を見てたのがその象徴のよう。

隠れ家での中尉の独白がすごくて見入っちゃった。

ものすごい自己卑下と自分自身が演じた理想の男への羨望と、その理想を地でいくロベルトへの嫉妬とかとか。金蔓のつもりだったのに、本当の卑怯者の脱走兵の自分を夫人に知られたくなかったんだね。。。

なので冒頭で言われてたほど、本当は貴婦人たちには相手にされてなかったんじゃないかな。

魔法が解けた後、伯爵夫人が見る裏路地の景色が怖いよね。

メモ
ブルックナーは7番
冒頭、イルトロヴァトーレを観劇する伯爵夫人の場面。ロケ地は、フェニーチェ劇場だったとのこと。ちなみに、近年の火災により消失した際、再建の助けにこちらの映画を観て、細部を確認したとのこと。引用元「オペラの運命」岡田暁生・著

それと、ファーリー・グレンジャーの吹き替えは、エンリコ・マリア・サレルノさん。「白昼の大列車強盗」など。

追記2023.7.5
原作者のカミッロ・ボイトは、ヴェルディの後期オペラ作品の台本作家としても知られるアーリゴ・ボイトのお兄さんとのこと。アーリゴ・ボイトは、ヴェルディ作品の「オテロ」「ファルスタッフ」の台本と「シモン・ボッカネグラ」の改訂を担当。