クシーくん

或る夜の出来事のクシーくんのネタバレレビュー・内容・結末

或る夜の出来事(1934年製作の映画)
4.3

このレビューはネタバレを含みます

面白い!本当にありとあらゆる現在の王道的展開が詰まった、天才的アイデアの塊。
スクリューボールコメディは「赤ちゃん教育」くらいしか観てなくて、それほど熱意と興味が湧かなかったのだが、これを機に30~40年代の作品をもっと見てみたい所。

割とコルベールの方は早くからデレを見せ始めるのに対して、クラーク・ゲーブルは最後まで素直になれないのが可愛い。こんなナイスミドルのおじさんが可愛いというのも変な話だが、知的でハンサムで皮肉屋だけど、ここぞと言う所では紳士的で優しく、どこか三枚目な所もある。こんな魅力的なおじさん、エリーじゃなくても道中好きになってしまう。全然止まらないヒッチハイク講座からのお色気ストップでゲーブルの驚愕顔ショットが入る、からの超絶不機嫌になる、でニヤニヤが止まらない。

クローデット・コルベールは最初ピンと来なかったが、ゲーブルとの丁々発止の掛け合いで俄然魅力が出てきて、最後は大好きになってしまった。すれ違いから自棄になる所までピーターと気持ちがシンクロしてて、どんだけ仲良いんだこいつら!コルベールを見たのは今作が初めてだが、彼女が主演した「クレオパトラ」や「青髭八人目の妻」も見てみたい。

お父さんがどこまでも娘思いで愛情深く、赤ん坊の時以来一度も泣いた事がないという娘を抱いて慰める所は不覚にもホロッと来る。ああいうの弱いな。逃げた花嫁を見て会心の笑みを浮かべて旨そうに葉巻を咥えるショットは最高。バージンロードを歩きながら娘を説得し続けた、父親の根気と愛と分別の勝利である。

夜行バスの雰囲気も好きだったな。以前「三十六人の乗客」という1950年代の邦画でもエモさを感じたが、アメリカの夜行バスは流石に陽気さが違った。疲れて寝込んでる人には迷惑かもしれないが、楽器の音色に合わせて皆で歌い出すの良い。

ジェリコの壁がラッパの音と共に崩れさるラストシーンは笑った。あれは当時の描写としてはかなり攻めてないか?
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