ネネ

キャリーのネネのレビュー・感想・評価

キャリー(1976年製作の映画)
3.9
優しさや愛情なんてものは、いとも容易く悪意にかき消されてしまう。
善意の裏に潜む悪魔はとくにタチが悪い。
というもう本当に気の滅入る真実を、これでもかってくらい突きつけられた98分でした……。
まだ胃もたれが……。

病的に痩せた女の子が、血塗れのドレス姿で佇んでいるパッケージ。
この強烈なイメージから、当然、凄惨なホラーを予想していたのですが、惨殺シーンより恐ろしいのは、気持ちをえぐるような女子高生たちの日常生活のほうで。
とにかく女の子の意地の悪さが、ものすごく生々しく描かれています。

キーとなるのは、優等生のスーと、アイドルポジションのクリス。
クリスは不良の彼氏がいる気の強い少女で、キャリーに恥をかかせようと、ある計画を思いつきます。
このクリスが取った行動は、もちろんひどいのだけれど、「物語におけるいじめっこの行動」としてはよくある範囲。

問題はスー。
優等生のスーは、キャリーをいじめていたことを、女教師からこっぴどく叱られて改心。
友達のいない、いつも独りぼっちのキャリーがプロムに参加できるよう、自分の彼氏にキャリーを誘うよう頼みます。
当然、キャリーはからかわれていると思って誘いを断り、彼氏も「断られたから諦めよう」とスーに告げますが、スーはかたくなに聞き入れません。

これキングの原作ではどうやら、彼氏ではなく幼なじみの男の子に頼むようで。
そこを彼氏に変えてきたデ・パルマ監督の容赦のなさ……!

クリスと違って、映画の最後まで、スーが直接的に糾弾される場面はありません。
表面上はずっと一貫して、「改心した優等生が、キャリーに優しくしようとした」という描かれ方のまま。

でも。
いじめていた子が先生に叱られて、「悪かったな」と反省するもの?
自分の彼氏にデートに誘わせて、その気になってしまったキャリーの恋心は?
プロムの日、こっそり体育館を覗きにいったスーが、とても楽しそうにしていた理由は?
スーに罪の意識がなく、本当に善意の行動だったのなら、ラストシーンのアレはありえないのでは……。

順を追って考えていったとき、この映画の中で、誰が一番悪魔的な行動を取っていたのかが見えてきて、ゾッとしました。

デ・パルマ監督、キワモノ扱いしてごめんなさい。
すごい技術と容赦のなさ、恐れ入りました……。
ネネ

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