きらきら武士

秘密の花園のきらきら武士のレビュー・感想・評価

秘密の花園(1993年製作の映画)
4.3
児童文学作家フランシス・ホジソン・バーネット原作の映画化作品。
アグニエシュカ・ホランド監督、フランシス・フォード・コッポラ制作総指揮。

原作が大好きで子供時代に何度も読んだ。公開時には映画館で観て、後にVHSも買った。

美しい映像にうっとり。特にラストのヒース咲き乱れる丘!(遠景ですが)最高。
荒涼とした丘陵地に建つお屋敷は『嵐が丘』を彷彿とさせ印象的。ヒースクリフ!キャシー!

基本、映画は原作に忠実でありながら、原作にない設定や、現代的な味付けを加えている。

メアリーが引き取られた伯爵の家の奥様と、自分のお母さんが実は双子だったという意味深な設定。
暗いお屋敷のゴシックホラー的なおどろおどろしさ。
伯爵をロンドンから召喚するためのトライバルな儀式。マジックリアリズム。
ディコンとメアリーの仲の良さに嫉妬するコリン。メロドラマの萌芽。
美しい庭園に混じり始める艶めかしいノイズ…

だいたい『秘密の花園』なんてタイトルからして、なにやらイケナイ不穏な雰囲気が漂う。…か?

小学校の図書館の人気の本に、学研の「ひみつシリーズ」というものがあった。
『宇宙のひみつ』『地球のひみつ』『恐竜のひみつ』などなど夢中で読んだ。
それにひっかけて言うなら、この映画はさしずめ『お屋敷のひみつ』『クレイヴン伯爵のひみつ』『大人のひみつ』といったところ。子どもは秘密が大好きなのだ。
そして汚れた大人になっても今尚、私は「秘密」にとらわれながら生きているのである。

なんて。
知らん。

さて、映画はそれ以上イケナイ方面に深入りすることもなく、原作通りの大団円を迎える。みんな幸せ。(若干ハイジとかぶるけど)

原作の精神に忠実な、心温まる名作。

俳優陣も素晴らしい。
主役メアリー役のケイト・メイバリーは最初の無愛想な顔から最後の可愛らしい少女への変遷が印象的。原作のイメージどおり。可愛すぎないのがいい。

家政婦メドロック婦人役のマギー・スミスも、威厳と厳格さを見事に演じ、後に「マギー・スミス属性」と呼ばれる(今私が作ったけど)、天使にラブソングを、の修道院長や、ハリー・ポッターのマクゴナガル先生、ダウントン・アビーのバイオレットおばあちゃん、などの当たり役を演じていく。

メアリーの世話役のマーサを演じたローラ・クロスリーについても書いておきたい。当時もめっちゃ可愛いと思ったが、今観るとそれに加えて「うちの長女に欲しい」と思ってしまう程可愛い。いや、長女いるけど、子どもらの一番上にこの子をお迎えしたい。それ程良く出来た娘さんです。

あとは、原作の中では個人的にコリン推しなのだけど、映画ではコリンの影がかなり薄くて、お顔も悲しいぐらいに庶民顔にされてコリン(貴族顔)の引き立て役みたいになってるのが悲しかった。そこまで露骨に英国階級社会を描かなくても…。

有名俳優はあまりいないけど、上品な演技・演出でございました。

あと、音楽も良くて特にメインテーマは隠れた名曲。その変奏曲も哀しげで個人的にツボだった。昔、サントラも買った。

最後にもう一度。
全体として、原作の精神に忠実でありながら、現代的な要素をうまく取り入れた秀作。みんなが幸せになる大団円が心温まる作品だった。皆幸せになれて良かったね。本当に。

おしまい。



余談。
アグニエシュカ・ホランド監督の最新作『人間の境界』(2024)
ロシア・ベラルーシの画策によって、EU・ポーランドに送り込まれる「人間兵器=難民」の過酷な現実を描く告発作品。無残に踏みにじられ消えていく現実世界の命に胸が潰れた。
落差よ…(涙)


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