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逢びきのhasseのレビュー・感想・評価

逢びき(1945年製作の映画)
3.8
演出4
演技3
脚本3
撮影4
音楽5
技術4
好み3
インスピレーション4

○「たまらないわ、何て詮索好きなの…死ねばいいのに。いや、それはあんまりね」(ローラ)

第一回カンヌ国際映画祭でグランプリ(今のパルムドールにあたる)を受賞した、デヴィッド・リーン監督作。

序盤の、お喋りな知人に対するローラの独白が容赦ない毒を含んでいて面白い。ずっとこんな調子で続いたら神作になっていただろう。主婦の毒舌モノローグものってなかなかない。
ストーリー展開に目新しさはないものの、いくつか光る部分が。
ラスト、不倫の終わり(二人の感動的な別れ)はメロドラマの一番の見せ場のはず。どんな愛の言葉を交わすか、最後のキスを交わすのか…等盛り上がりを期待させるものだが、この映画では二人の別れは主人公の知人の介入によって消化不良で幕を閉じる。不倫の愛は成就せず、それどころか満足に別れることも許されないというドライな展開に意表をつかれた。
そのあとの、主人公が死を決してカフェを飛び出すショットも、徐々にカメラが傾いていき、ホームに飛び出すと同時に鋭い汽笛を吹かす演出は当時にしてはだいぶスタイリッシュ。

そもそも、女性が主人公で、しかも家に縛られず街を自由に闊歩して行われる不倫のストーリーというのが、1945年の作品にしてはかなり新鮮に感じられる。
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