zhenli13

ドラブルのzhenli13のレビュー・感想・評価

ドラブル(1974年製作の映画)
4.0
扉を開けて閉める→別の場の扉を開けて閉める というマッチカットの瞬間移動が何度も出てきて、移動してないようにも感じられて面白い。マイケル・ケインの住むメゾネットの内装やデルフィーヌ・セイリグの居る教会を改装したような一間の部屋などは随所に赤が効いていて、それぞれの構造も面白い。ロンドンの街中にあるメゾネットのバルコニーからの風景は意外にも緑が広がっていたり、教会の薔薇窓のようなステンドグラスが入った天井の高い空間など。建物の構造を見せる演出は終盤の風車小屋でも効いてくる。上下の狭小空間を利用したアクションがとても好いしヒッチコックを思い出さずにいられない。
そのほか、部屋に入った人物の進行方向にしたがって追う手持ちカメラのアップ、かと思えばセイリグとジョン・ヴァーノンがケインの部屋に忍び込んで偽証拠を残すシーンは長回し固定など、そんなこんなで室内シーンが多いが緩急に富んで飽きない。後半はロケーション撮影が多くなる。

ケインの妻役のジャネット・サズマンがずっと打ちひしがれているばかりだったのが、おそらく二人の思い出であろう『サウンド・オブ・ミュージック』の役名をひっかけた電話のやりとりで盗聴をやり過ごすシーンから俄然頭角を現してくる。ケインは電話ごしにサウンド・オブ・ミュージックのプレリュードをピアノで弾かせ、電話を切った後ピアニストにチップを渡すところまで映してるのが好い。ここからサズマンは真っ赤な服でそれこそ諜報員のような振る舞いになる。これがセイリグが姿を消すのと入れ替わりなのがまた意味深。

プロットよりも絵とアクションの面白さで見せる。マイケル・ケイン、ドナルド・プレザンス、デルフィーヌ・セイリグと好きな役者が揃っていて嬉しい。ブロンドのファムファタル的なセイリグの扱いがちょっと安い感じで残念だったが、ドナルド・プレザンスはやはりクセがあってよかった。
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