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キング・オブ・コメディのbluetokyoのレビュー・感想・評価

キング・オブ・コメディ(1983年製作の映画)
3.9
こんなストーリーだったのか、とびっくり。タイトルから、お笑い芸人が、R-1グランプリかなんかで優勝するというようなサクセスストーリーなのかと思ったが、ぜんぜん違うのね。ありていに言ってしまうと、話がタクシードライバーなのである。むしろ、いまの時代の方が通じるような感じで興味深い。いまの時代、推し活がもてはやされるわけだが、ちょっと待ってくれ、そういう話なわけである。

簡単にあらすじ。
超人気お笑い芸人のジェリーが、テレビ番組の収録を終えて、テレビ局から出てくる。いつものように、出待ちのファンが押し寄せる。
まあまあとファンをなだめつつ押しのけてクルマへ。すると、クルマの中には推し活を通り越してストーカー化した女が潜んでいて抱きついてくる。やべえ、どうしようとジェリーが思った瞬間、ある男がストーカー女を引っ張り出す。やれ助かったとクルマに乗り込むジェリー。なぜか、その男もするりとクルマに乗り込んでしまう。仕方がないので、ジェリーはクルマを出させる。

クルマに乗り込んできた男、ルパート・パプキンは、しかし、通りすがりの親切な人ではなかった。熱烈に自己アピールし、自分もお笑い芸人なので、テレビに出してくれ、みたいなことをまくしたてる。
やべえ、こいつ、まじだぜ、と困惑するジェリー。とりあえず、事務所に来てくれ、と当たり障りのないことを言って、パプキンから解放される。

パプキンは、もうすでにテレビ出演が決まって、人気に火が付き、有名人になった気でいる。
そこで、以前から好きだったスタンドバーで働くリタに声をかける。サインを渡して、有名になっちゃうから、いまのうち、渡しておくわ、と言いながら。

さっそく、ジェリーの事務所に行くが、体よく追い出され、懲りずにまた行くと、つまみ出された。

事務所の外に出ると、以前、クルマの中に潜んでいたストーカー女のマーシャがいて、アハハハ、不審者扱いでつまみ出されてやんの、とバカにされる始末。

めげないパプキンは、リタを連れて、ジェリーの別荘へ。招待されたと言われたので、真に受けて来たわけだ。
着くと、かってにジェリーの別荘にずかずかと上がり込む。しばらくすると、ジェリーが別荘に戻ってきて、ゲキ怒り。
パプキンとリタは追い出される。

こうなったら実力行使だぜ、とパプキン。拳銃を持ち出し、マーシャと組んで、ジェリーを誘拐、拉致する。

事務所を脅迫して、パプキンのテレビ出演を承諾させる。

警察にパプキンは、逮捕される。ジェリーが監禁されているところに案内するから、と言って外へ。

実際は、リタの働いているスタンドバーへ。備え付けのテレビのチャンネルをパプキンの出演番組に合わせるのだ。

パプキンは自分の出演した番組をリタに見せ終わると警察官に連行されていった。

で、最後はどうなったのか。最後のシーンは、完全に、見る人に委ねられている。

最後は、パプキンのテレビの放映シーンは視聴者の反響を呼び、刑務所で自伝を書くや、ミリオンセラー、たちまち、超有名人になる。

この最後のシーンは、果たして、映画世界での現実なのか、それとも、パプキンの妄想なのか。

まあ、普通に考えれば、妄想なんだろうけど(タクシードライバーも最後のシーンは妄想だよな)。敢えて、これは妄想ですよ、と説明するようなシーンはない、というのはすごい。
この映画を見る者が、妄想だと思わなかったとしたら、パプキンの妄想に取り込まれてしまったのだろうか。

おそらく、実は、妄想だろうが、妄想ではなかろうが、どっちでもいいんだよ、ということを言いたいのだろうと思う。
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