このレビューはネタバレを含みます
強烈。
終わりまで全く目を離せませんでした。
圧巻のデニーロ。
キングオブコメディというタイトルながらコメディ映画ではありません。
近いものを挙げるなら「ケーブルガイ」「ナイトクローラー」「ミザリー」あたりでしょうか。
スコセッシの作品はクセが強くてイマイチ合わないものが多いのですが、これは分かりやすくて面白かった。
ジャケットからすでに危ない雰囲気が漂っていましたが、期待を裏切らない内容でした。
デニーロ演ずる主人公がまずもって怖い。
自宅のセットと一人芝居にはゾッとしました。
一人芝居の内容と現実世界を混同するところはもはやホラー。
夢の叶え方も狂気。当然に訪れる結末を十分に理解して受け入れているところがなおさら怖い。
ただ、主人公はイカれにイカれてますが、どこまでも純粋で悪気がない。
なので、最高に迷惑な奴ですが、どこか憎めないのです。
ショーが始まる瞬間、彼を応援している自分がいました。
ショーでは、主人公のバックグラウンドがネタとして語られており、少しかわいそうだなとも思いました。
「ドン底で終わるより、一夜の王になりたい」
ショーの最後にふと見せた彼の正気が、妙に胸に響きました。
逮捕されることも全て受け入れた上で、好きな人に一瞬の輝きを見せるシーンはグッときました。
主人公みたいなことは絶対しちゃいかん訳ですが、夢に向かってただ邁進する姿は羨ましくもあります。へこたれないもの。
ラストも、アメリカならそんな展開もなくはないかもなと思わせてしまいます。さすがにブラックジョークだと思いますが。
デニーロの芸達者ぶりを存分に楽しめる、恐ろしくも少し切ない一作。
※特典映像で2013年当時の対談が収録されており、ジェリールイス氏はかなりご高齢でしたが、ネタを披露してきっちり笑いを取っていました。
素晴らしいプロ意識。
※作中で散々な目にあった同氏は2017年に91歳で亡くなられたそうです。合掌。