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キング・オブ・コメディのtsuyocinemaのレビュー・感想・評価

キング・オブ・コメディ(1983年製作の映画)
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【キングオブコメディ/THE KING OF COMEDY】
コメディアン志望のルパートは超人気コメディアンのジェリーを信奉しており、出待ちの末、ジェリーに接触するが全く相手にされない。
そこでルパートはジェリーの熱狂的なファンであるマーシャとともに彼を誘拐して、ジェリーの番組に自身を出演させるように要求する…
マーティン・スコセッシ監督&ロバート・デ・ニーロ主演によるブラックコメディ。

2019年を代表する一作である『ジョーカー』のモチーフともなった作品。
わかりやすく好きな女性とのダンスのシーン、トーク番組に出る練習をするルパート、ひょんなことからのフックアップを望んでいたり、精神的病理、母親との関係、シーンのオマージュや設定の拝借がかなりあるなぁと。
しかし、狂気が苦笑い的ブラックコメディになる『キングオブコメディ』はどこか陽気だ。
というのは肥大化した自意識ゆえの妄執によりジョーとの会話をでっち上げたりするルパートや現代であれば完全なストーカーのマーシャも社会の目とか法律とかシカトしてやりきってるから清々しい。どんなに観客が彼らを〝対象〟として「痛いなぁ」と観ていても彼ら関係ない(彼らが実在していても)。
多分あの瞬間充足している。
ちょうど痛いことやってても自己完結できるYOUTUBER的な感じなんだろう。

一方『ジョーカー』の方は完全にある時点まで客観性や社会性を持っているが故に自身の境遇や展望を観ざる得ないからつらいし、観客も主人公が客観視するときに持ち出す社会が現代の問題とリンクしてしまってるから〝対象〟でなく〝共感〟になっているんだろうと感じました。 『キングオブコメディ』を下地に『ジョーカー』のようになった時代性を考えてしまったよ。
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