イチロヲ

地獄のイチロヲのレビュー・感想・評価

地獄(1979年製作の映画)
3.5
義兄との不倫を咎められた女性(原田美枝子)が、死の直後に産み落とした赤ん坊の人生に干渉していく。日活の旗手・神代辰巳が東映の下請けで製作している、エロティック・ホラー。東映特撮ヒーローの始祖こと矢島信男が特撮監督を務めている。

冒頭部、不義を働いた女性が地獄の亡者になると、舞台が20年後の現在にタイムスリップ。産み落とした赤ん坊(原田美枝子・一人二役)が成人になり、出生の地に舞い戻ってくる。そして、母親の思念(主に色欲)に取り憑かれて、生き写しになってしまう。

20年前の因果律が動き出すと、かつて煩わしい赤ん坊を施設に入れた兄嫁(岸田今日子)が戦々恐々。若くて美人なヒロインに対する嫉妬のようだが、「男を堕落させてしまう魔性の女」と「罪人」の表裏性を深掘りさせているような印象を受ける。

人間ドラマが冗長気味のため、「地獄のシーン(往生要集の映像化)を待っている状態」が長く感じられるが、この世という地獄から脱することができない地獄、この世の地獄から脱した後の本当の地獄、というカオス状態を喜劇的に楽しむことができる。
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