青二歳

四十八歳の抵抗の青二歳のレビュー・感想・評価

四十八歳の抵抗(1956年製作の映画)
3.5
一体初老って何歳からを言えばいいんだ…!(切実)
先程57歳は初老扱いなのかと疑問を述べましたが…今作は48歳山村聰の"ファウスト"!50前はさすがに若くない?と思うけども…1956年…そう当時まだ定年なんと55歳!"48歳の抵抗"…50を前にして隠居にゃ早いが身の振りようを考え始めるお年頃。こういうストーリーが48歳で成り立つということはその辺共通認識だったんでしょう、なんせこの原作小説ベストセラーだったらしいですから。
…このつまらん話が?ベストセラー?…うーん、いつの時代も年代の変わる節目は人間迷い惑うものらしい(=ω=;)oh..セツジツ...

48歳…落ち着き切るにはまだ早い…という事で、真面目な山村聰に誘惑の虫が疼きます。主にエロ方面で。色ボケじゃねーかとツッコミを抑えて見てみると…
役職につく社会人としての責任重い山村聰、父親としての山村聰(娘若尾文子が駆け落ちしちゃう)、そしてそんな役割から離れた男としての山村聰…が葛藤する物語なんですね。普通この手合いでは役割から離れた個としての欲や感情が大きく扱われるかと思うんですが、そこは西洋ではないのでね、人間にとって役割というものが如何に大きいか…です。今まで築いた役割に収束してゆきます、現実離れしたファウストにはなりません。映画としては盛り上がらないけど、中々リアルなお話です。妻杉村春子との掛け合いも微妙な変化を経て落ち着ついてゆく所は見事。
浮気心で何回か火遊びするけど…大事にならんうちにと思い直して逃げ出して家に戻る…なんて既婚者のおっさん沢山いるでしょ。

なんともリアルですこれ( ̄  ̄;) その分映画の落とし所は弱い。ささやかな"惑い"を劇映画に仕立てる仕掛けが"ファウスト"からとった誘惑者なのに、ココが惜しい…誘惑者メフィストフェレス船越英二がふら〜っとフェードアウトしちゃうんですよね、勿体無い。この悪魔でもう少し遊んでくれたらエライ不気味な映画になると思うのに。

船越英二の虫歯菌はひふへほ〜コスプレの笑顔が最高にキュートでした。あと若尾文子のでんぐり返し。とりあえずこれだけで満足出来ちゃう自分。雪村いづみはいつ見ても目が笑ってなくてちょっと怖い。その怖さが不思議ちゃんキャラで良かったかも。
面白いわけではないが、初老の定義の変遷を知るには良作でした。でもやっぱり山村聰って絶倫っぽい顔してるし若くて初老って感じがしないので#(なんかダメだが)おっさん頑張れタグを置いておこう。ちなみに山村聰ご本人は撮影当時45〜46歳。絶倫っぽい!
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