デニロ

女相続人のデニロのレビュー・感想・評価

女相続人(1949年製作の映画)
3.5
1949年製作。原作ヘンリー・ジェームズ。脚色ルース・ゲーツ、オーガスタス・ゲーツ。監督ウィリアム・ワイラー。

中高生の頃読んでいた世界名作映画の紹介本に本作が掲載されていて、イケてないお嬢様がダメンズにトロトロにされてしまう話、と、こんな書き方じゃなかったけれど紹介されていた。

その類いまれなヒモ願望男がモンゴメリー・クリフト。にやけた笑顔でオリヴィア・デ・ハヴィランドの世界を変えてしまいます。30代半ばのオリヴィア・デ・ハヴィランドが演じるその令嬢、という年齢でもないけれど、既に母親は亡くなっていてお医者様である父親と暮らしている。母親からの年1万ドルの遺産もあり、趣味の刺繡などで日がな一日、何不自由なく暮らす日々。でも、役柄に合わせたパッとしないお顔の化粧にやや猫背でうつむき加減の姿勢が相俟って、父親に連れられていやいや出向くパーティでは壁の花。おせっかいな叔母が世話を焼いてダンスパートナーをあてがうけれどすぐにその彼もどこかに行ってしまう。彼女といてもつまらないんだろうと、わたしでもわかる。父親はそんな彼女を横目で見ながら、明るく美しい社交的だった亡き妻を想うのです。

そんな時、叔母の知り合いだというモンゴメリー・クリフト/モーリスがにやけた顔でオリヴィア・デ・ハヴィランド/キャサリンに近付くのです。

彼はおそらく叔母から聞いていたのでしょう。キャサリンは、亡き母の遺産が年に1万ドル、そして、父親の遺産が年に2万ドル、合わせて年3万ドルの遺産相続人であると。この女を手に入れれば遊んで暮らせる。今まで培ったテクニックで免疫のない彼女を篭絡するのは容易そうだ。しめしめ。が、問題は花嫁の父だ。速攻で結婚を申し込んで既成事実を作ってしまおう。

そんな魂胆はまるっととお見通しの父はキャサリンに言って聞かせる。彼はお前の財産狙いだ。おいおい、それが父親の言うことかとは思うのですが、娘がこれから先しゃぶり尽くされていくことを思えば冷たく言い放つしかありません。が、しかし、もはやモーリスのテクニックに蕩けてしまっているキャサリンのこころとイカのとんびは果てしもなく燃え盛っているのです。父は、それほどにモーリスがいいのならわたしの財産は放棄してもらう、と宣する。愛さえあればお金なんて、そんな純情でモーリスに父との決別を告げ愛を求めるのですが、約束の時間にモーリスは現れません。

そんな話。

何年かして。父も死に遺産を相続しひとり邸宅で暮らすキャサリンの下に、巧言令色鮮し仁そのもののモーリスが再登場するのですが、もはや世間知らずのお嬢様ではありません、期待一杯のモーリスを夢見心地にさせて落とします。

でも、あんなんじゃ懲りないよ。きっと。

シネマヴェーラ渋谷 文学と映画 にて
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