Arata

がんばれ!ベアーズのArataのネタバレレビュー・内容・結末

がんばれ!ベアーズ(1976年製作の映画)
4.6

このレビューはネタバレを含みます

たしか一昨日鑑賞。

以前から複数の著名人の方が、本、ラジオ、など様々な媒体で、この作品をおすすめしており、ずっと気になっていた作品。

ただ、邦題の「がんばれ」の部分が、どうも引っかかってしまって、中々鑑賞する気持ちが固まらなかったのだが、先週終了したラジオ番組「伊集院光とらじおと」で、メインパーソナリティの伊集院光さんがこの作品のファンであり、番組のオープニング曲が「カルメン」だった理由のひとつが、「がんばれ!ベアーズ」のテーマ曲だったからだとおっしゃっていて、背中を押された感覚になりようやく鑑賞に至った。

原題は“the bad news Bears”なので、がんばれと言うよりは、現代語で無理やりに訳すと、「ベアーズと言うやべー奴ら」と言ったニュアンスかな。



以下、あらすじ、考察、横道の話などを並べる。


マイナーリーガーだったバターメイカーと言う男が、問題児(bad news)だらけの小学生野球チーム「ベアーズ」の監督になり、地元の大会を通して、監督も含めみんなが「ほんのちょっとだけ」成長する様子を描いた作品。
勝利至上主義とは一線を画し、努力すること、人生を楽しむ事を教えてくれる。


特訓とまではいかないが、しっかりと練習をして、今まで出来なかったプレーが出来るようになり、劇的には巧くならないものの、みんな着実に力を付けていく。


途中、勝利に執着する事で内紛が起きるが、最後は一致団結し、文字通りの全員野球で挑むも惜しくも負ける。
負けたにも関わらず、清々しい気持ちになれる。
勝たなくても良いと変に達観した考えではなく、負けてちゃんと悔しがる、だが勝敗だけが全てではないと言う姿を見せてくれた。

この姿は、まだ開幕したばかりだが、2022年のプロ野球で話題の新庄剛志BIG BOSSが率いる北海道日本ハムファイターズの、強豪のソフトバンクホークスとの開幕3連戦で、ベンチ登録された選手全員が出場し、自分たちの努力の成果を発揮し、更なる成長を見据えた可能性を模索する場としての試合の戦い方とダブって見えた。


監督のバターメイカーは、ほとんどのべつ幕なしで酒をあおっている様な状態。
登場シーンでは、野球の練習場に車で乗り付けるのだが、着くや否やで缶ビールのバドワイザーを開ける。
走行時の揺れによるものと思われるが、勢いよく炭酸が噴き出す。
上に泡ばかりが溢れてきてしまい、その泡を捨てるのだが、その「減った分」をバーボンウイスキーのジムビームを補充して、缶の中でカクテルを作って飲んでいる。
ややウイスキーをこぼし過ぎな感じではあるが。
この手のおぼつかない感じは、ひょっとするとアルコール依存の症状なのかも知れないとも思えた。
この、ビールとウイスキーを混ぜたカクテルを「ボイラーメイカー」と言い(日本では、バクダンと言う名前でも知られる)、ティタムオニールさん演じる娘からもこう呼ばれている。
短気な性格で、瞬間湯沸かし器の様な振る舞いから付けられたであろう、バターメイカーの悪口めいたニックネームでもある。
ビールにウイスキーを沈めると、ビールの泡がブクブクと湧き上がってくる。その様子がまるでボイラーの様だとか、身体の中から沸騰しそうだとか、爆発するみたいだとかで、そのように呼ばれている。
じっくり時間をかけて作られる「バター」ではなく、瞬間的に湯を沸かす「ボイラー」になると言うウイットに富んだジョークだとも感じた。

プールサイドでのミーティングの場面、子どもがおぼつかない手付き故の、ソフトシェイクをしたマティーニを飲むシーン。
最後はオリーブを添えて、バターメイカー曰く美味しいとの事だが、本当かな笑
マティーニは、本来はステアで作るカクテル。007のジェームスボンドがシェイクを希望する描写があり、以後シェイクスタイルのマティーニが人気を博す。
ショーンコネリー氏主演作「007ドクターノオ(1963)」でも、このソフトシェイクスタイルのマティーニが供されるが、原作のボンドはキンキンに冷えた、いわゆるハードシェイクスタイルが好みであると言う描写が多く、やや疑問の残るシーンだった。
本作は、その約10年後の作品との事で、バターメイカーは若い頃に007を鑑賞し、それ以来ソフトシェイクのマティーニが好みなのかも知れないと、横道にそれた考察をしてみる。

ラストのビールは、なんと言う銘柄か不明。
シャンパンは買えないからとの事らしいが、小学生の大会でビールかけとは、今では考えられない演出だ。
ケリーはタバコ吸ってるし(ティタムオニールさんも過去作「ペーパームーン」で、タバコを吸っていたし)、この頃の映画ならでのシーンでもある。

試合に勝ちたいから、下手くそな僕をどうか使わないでと懇願するも却下。その彼が大飛球を見事キャッチするシーンは感動モノだ。

全員の今シーズンの成果を発揮するのが、今日の最終戦。
もちろん勝ちたいが、勝敗という「結果」ではなく、あくまでも努力してきたと言う「成果」を追い求める。
勝敗が全てだと、結果が伴わなければそれまでとなってしまうが、成果を追う事で更なる成長へ進んでいける。

「成功にとらわええるな、成長にとらわれろ」
と言う、サッカー日本代表で活躍した、本田圭佑氏の言葉が頭をよぎる。

私は、勝敗や優劣がつく事に疑問を持っていた子どもだった。
こんなスポーツの取り組み方、勝敗への向き合い方を、その頃に知りたかった。
Arata

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