捨て子ナヨコの半生を描く、伊丹十三 の監督第5作目。TVで何回か観ているからだろう、ストーリーの大半に見覚えがあった。
置き屋に身売りされる13歳の少女時代から宮本信子に演じさせる大胆さ。
芸者になったナヨコの身請け先が坊さんというのがいかにも。京都の花街も坊さんでもっていると聞く。
80年代後半の元気な日本人サラリーマンの姿が懐かしい。
幸運をもたらす存在として、男たちの間で譲ったり譲られたりする「あげまん」の運命。物語は一応のハッピーエンドを迎えるが、女性の描き方が古臭く、思いのほか観ていてしんどい。
伊丹十三ほどの才能をもってしても、この3年前『タンポポ』で描いたラーメン屋店主の女性像よりも後退してしまっていることが悲しい。
とはいえ、当時はそんなことを少しも感じなかったのだから、我々の意識が相当変わったということでもあるのだろう。